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第30話

流石にこんなことをされれば堪える かと言って帳には言えない 言えば八尋も咎められるだろうし 仕事が大変な帳に迷惑をかけることはしたくない そんな中でも浬を癒してくれるものはあった そのお陰で何とか心を保っている 「ルシェル!!」 浬はぎゅっとルシェルに抱きつく それにルシェルも応えぎゅっと抱き締めた 彼にだけは甘えることができた それでも浬は学校でのことは彼にも話せない わざわざこんなこと彼にも言う必要もないと思っているからだ 今はただルシェルとの一時を過ごしたかった 彼は色んなことを教えてくれる吸血鬼としての能力、帳からは教えられていないことも 吸血鬼としての能力は人よりも頑丈で怪我をしてもすぐ治る 他には驚異的な身体能力故、この間のように軽く攻撃するだけでも普通の人間はかなりのダメージを受けてしまう そして人を吸血鬼に変えること これは中位以上の吸血鬼のみができることだ 人を吸血鬼に変えるには互いの血を与え合うこと 吸血鬼へ致死量程の血を与え、そして吸血鬼から血を貰う そうして吸血鬼になったものは一生その吸血鬼だけの血を貰って生きなければならない 他の者の血では拒否反応を起こしてしまうのだ しかしそうそう中位以上の吸血鬼が人に自らの血をあげると言うことなどしない そもそも人に触れることすらあまりない それでも人を吸血鬼に変えるのは道楽故なのと 人に恋をしずっと一緒にいたいと願う吸血鬼の願いから……… そうして元人間と吸血鬼との間にできた子供は 下位の吸血鬼となるのだ 「そう…なんだ……全然知らなかった」 どれも帳からは何も教わってはいないことだ 確かに人間を吸血鬼に変える事なんて混血の浬にはできないから関係無いし 身体能力のことなど自分が一番知っていなければいけないことだ 「ねぇ浬、君そろそろ血が欲しくなる頃じゃない?」 「え、ああ……うん……」 確かにそろそろ帳から血を貰う頃だ ルシェルにはそう言うことも分かってしまうのか? 不思議に思う浬だがルシェルが頬を手で撫でてくるのでそっちに気が行ってしまった 「いいよ、飲んで」 「でも………」 貰ってばかりで申し訳無く思う そこで浬はこんな提案をした 「じゃあ俺もルシェルに血をあげる ダメ?」 その言葉に一瞬驚いたルシェルだが 分かったと頷いた それで安心してルシェルの血を彼の首から飲む 以前も思ったがルシェルの血は他とはやはり違う 濃いと言うか不思議な力を感じる それにとても美味しい 下手したらいつまでもこの血を貪ってしまいそうなほどだ 「ん……はぁ………」 これくらいだろうと思うくらいに血を飲むと浬はルシェルの首から口を離す 「次ルシェル飲んで?」 「ほんとにいいの?」 「うん」 そしてルシェルが浬の首に牙を突き立てる

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