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第31話
「ん………」
血を吸われるのは不思議な感じだ
噛まれるときは少し痛むものの牙を立てられたそこは次第に熱くなりゾクゾクする
そろそろ貧血になるかと言うところでルシェルは浬から離れた
「大丈夫?」
「うん大丈夫」
そう言うとルシェルよしよしと頭を撫でてきた
なんだか彼の撫でかたは子供扱いされているようで
子供じゃないと浬はムスッとした表情をする
そしてそれを見てルシェルはクスリと笑う
するとルシェルは子供扱いが嫌ならと頬にキスをする
「……っ!!
ちょっ………ルシェル?」
「だって子供扱い嫌なんでしょ?」
「そうだけど……からかわないでよ」
「ははっ、からかったつもりないけどね」
からかってないと言うけど浬からしたら恋人でもない相手にキスをするなんてからかっているようにしか思えない
けれど彼からのキスは不思議と嫌ではなかった
それからルシェルといつもの木に登って朝陽が昇る瞬間を見る
吸血鬼には少々眩しいものだが朝陽の美しさは見事なものだ
その内浬は眠くなってルシェルの肩に寄りかかって寝てしまった
「ふふっ、子供じゃないと言ってるけどこう言うとこは十分子供だよね」
浬が寝ていることをいいことにルシェルはそう言う
そして寝ている浬を起こさないように抱き抱え木から飛び降りる
多少衝撃があったが浬は起きる様子はなくルシェルはほっとする
そして彼を家まで連れていきそっと家に入りリビングのソファに寝かせた
浬がぐっすりと眠っていることを確認し立ち去ろうとしたその時
「待て、貴様何者だ?」
帳が背後から現れ銀の弾丸が入った銃を突きつける
ルシェルは銃を向けられているにも関わらず冷静な態度を見せ帳の方に体を向けた
「何と言われてもただの吸血鬼だけど?」
「ふざけるな
普通の吸血鬼ではない事くらい見れば分かる」
彼の圧倒的な威圧感と言うかオーラと言うか
帳でさえ冷や汗を流すくらい緊迫感が漂う
「別にそんなに怯えなくてもお前らに危害を加えるつまりはない
現にこの子を送ってきてやったんじゃない」
「…………」
確かにこちらに敵意があるなら浬を殺すだろう
なにもしていないどころかわざわざ浬をここに送り届けた
だがそれでも真意が見えないのでは警戒をせざるを得ず
銃を下すことはできない
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