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第34話

「別にこの子がここに居たいなら何も言わないんだけどここに居たくないと言うなら俺がこの子を貰おうかなぁって?」 「………っ ふざけるな!!」 ルシェルは浬を自分のもとに置きたいのだと言う 当然ながら帳はそれを拒む この得体の知れない男に浬を引き渡すなんて絶対にあり得ないと帳は言う しかしルシェルは本気のようで今まで笑みを浮かべていたのが一変、彼の顔からは笑みは消え 真剣な表情になっている だがそもそも人にさえ興味を持たない上位の吸血鬼が何故浬にこれほど執着を見せるのか分からない 故に例え浬が彼のところに行きたいと言っても簡単に引き渡すわけにはいかない 「ではお前に浬を引き渡すとして浬は幸せになるととも思っているのか?」 「さぁね、どうだろう?」 「お前言ってることが矛盾してるぞ」 「今は…ね…… でも必ず幸せにしてあげるつもりだよ」 どうにも曖昧な答えにイライラが募る いずれ幸せにすると言いながらその内容が見えてこないのだ なのに幸せにすると自信をもって言っているのだ 何を根拠にそんなことが言えるのか聞くと 根拠など無いと、しかし必ずできるのだと…… ふざけたことを…… こんな奴に浬は渡さない 所詮上位の吸血鬼、人の扱いなどたかが知れている そして浬を置いていった藜さんにも浬を還したくないと帳はそう思った 「まぁ、最終的に決めるのはこの子だけどね でもきっと俺を選ぶよ この子はそう言う子だから」 「ほざけ、お前になど渡しはしない」 「あっそ じゃ、俺はこの辺で」 そう言って彼はここを立ち去ろうとする 待てと帳はまだ藜の事を聞き出していないと 引き留めようとするが突然突風が吹いたと思ったらルシェルは消えてしまった 「クソッ」 何も聞き出せなかった帳は壁を拳で叩いた それからソファで眠る浬を見て毛布を持ってきて彼にかけた 彼の寝顔を見て先程のルシェルの言葉を思い出す 彼は浬が今幸せでないようなことを言った 自分としては精一杯浬を考えていた筈だがやはり何が足りないようだ 「ん………」 モゾモゾと浬が再び寝返りをうったと思えば目を覚ました そして辺りを見渡しここが森ではなく帳の家でルシェルが家まで送ってくれたやだと確認する 「おはよう浬」 「帳……おはよう えっと……俺……」 「トイレに行って寝ぼけてここに寝てしまったのではないか?」 帳は何も知らないと、ルシェルの事も何も言わずそう嘘をついた きっと浬も知られたくないだろうから

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