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第42話
「彼に、藜に会わせてあげようか?」
思わぬルシェルの言葉に浬は一瞬思考が止まった
どういうことなのか?ルシェルは藜を知っているのか?浬は混乱した
「藜を知ってるの?」
「ああ、知ってる
家を出て俺と来れば彼に会わせてあげるよ」
藜に会える……
浬は興奮して心臓がばくばくと跳ねる
だがルシェルは自分と来ればと言った
藜と会うには帳の家を出ろと
「どうして家を出ないといけないの?」
「……俺はねお前が辛い思いをするのが嫌なんだよ
俺とおいで?そうすれば彼に会わせてあげるから」
ルシェルの今までにない切羽詰まったような声で
浬の頬を両手で挟み自分の所に来いと言う
そんなルシェルにどうするばいいか分からない浬
ルシェルが本気なのは分かる
彼の元へ行けば藜に会える
けれどそのためには帳の所を離れなければいけない
彼のことは大好きだ
だから離れるのは寂しい……
「ねぇ浬、君はここにいて幸せ?」
「え?」
「俺はさ、お前の居場所はここではないと思う
俺の傍にいればそんな風に泣かせるようなことはしない
だからおいで?」
「………っ」
確かに八尋とは上手くやれてないし
帳にだって迷惑かけている
自分の居場所はここではないのかな?
浬は揺れていた
帳と八尋のことは好きだ
けれどもしかしたら自分はここにいない方がいいかもと……
どうしようか迷っていたその時……
漂ってくる血の臭い
これは……
「八尋……?」
間違いない八尋の血の臭い
何があったのか分からない
でも………行かないと
そう思って浬はルシェルから離れて八尋の元に行こうとするがルシェルが後ろから抱きついて阻止する
「ルシェル?」
「ダメ………
俺と一緒に来て」
ルシェルが強く抱き締めた離さない
けれど浬はその腕を振り払った
「ごめんルシェル
でも、行かなきゃ……」
「何故?君を嫌ってる子なんでしょ?」
「それでも八尋は優しいから
困ってる人を放っておけないいい人だから」
たとえ嫌われていようと他人に優しい
これが本当の八尋だから助けに行きたいんだ
浬はルシェルに背を向け八尋の元へと走っていった
「全く、馬鹿な子だ………」
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