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第44話

八尋は覚悟を決め目を瞑った しかしいくら待てども何も起こらない 恐る恐る目を開けてみると信じられない光景が目に飛び込んできた 「………っ!!お前……なんで……」 八尋の目の前には浬が立っていた そして血がポタポタと流れている よくみてみると吸血鬼の手が浬の胸を貫通しているではないか 吸血鬼は浬の胸から手を引き抜いて浬は地面に倒れた 「ぁ………」 「はっ、まさか庇うなんてな けどそんなことしてもこいつが死ぬことには変わりないがな」 吸血鬼は手に着いた血をペロリと舐めなかなかいい味だなと笑う そんな 吸血鬼を浬を抱えながら睨む八尋 だがそんな八尋を嘲笑うように笑みを見せる 「最後にもう一度問う 協会の場所を教える気はないか?」 「くたばれ」 「そうか…… そんなに生き急ぎたいのか」 そして吸血鬼は再び八尋へ手を振り上げる ああ……自分も兄と同じ道を辿るのか…… まだ一度も復讐なんて出来てないのに…… 八尋は走馬灯のように今までの事を思い出した 兄が死んで帳の所に来て浬に出逢った しかしこいつは吸血鬼だ 嫌いで憎くて……完全に逆恨みだ 分かってる、けどどうしても憎しみが消えず何度もこいつに当たって…… それなのに彼は身を呈して吸血鬼から護ってくれたのだ 本当に俺は馬鹿だ……… そして振り下ろされる相手の手 終わったと確信したその時 グサッと鈍い音がするが自分に衝撃はない みると相手の心臓に手が刺さっている そして血がどぼどぼと流れている 「全く、だから行くなと言ったのに お人好しだなぁ」 吸血鬼の後ろにいたのはルシェルだった しかしルシェルの存在を知らない八尋 彼が一体誰なのか 何故自分達を助けてくれたのか混乱する 「あ、あな…た……は………」 「五月蝿いよお前…… 俺の浬を傷つけやがって」 そう言うとルシェルは手をゆっくり引き その吸血鬼の心臓を握りつぶした 「死ね」 「ああああああ……ぁ……」 吸血鬼は悲鳴をあげ倒れ塵と化す そしてルシェルは八尋の方を見る 「―――っ!!」 その冷たい目は八尋の心臓に突き刺さるように鋭く冷や汗を感じる

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