53 / 135

第53話

ルシェルの屋敷に来て一月が経とうとしていた その間ずっと部屋に籠りっぱなしだ ルシェルが自由に外に出してくれないから まさに籠の鳥だ それでもルシェルがいろんな本や物を与えてくれたり度々ここに来て話し相手をしてくれたりして退屈はしなかった 退屈はしないが少々飽きてきた そろそろ外を歩きたい そうルシェルに伝えるとあっさりと了承された 「おいで浬」 ルシェルは手招きして浬を呼ぶ そして浬の手を引いて扉の開いた向こうに入る そこは植物園のような中庭でいろんな植物がある 「凄い……」 見たこともない花等が咲いていて恐らく熱帯植物だ 真ん中には三編みのように捻れた木があって迫力が凄い 「この木は何?」 「ああ、パキラだよ 観葉植物でよくみる」 「へぇ……」 他にも綺麗な花が所狭しと咲いている 浬はその中で見つけた花の方に小走りで寄っていった 見つけたのは真っ赤なハイビスカス 綺麗で好きな花の1つだ すると横からルシェルが手を伸ばしてきた そしてその内の一つを摘み取った 「君にはこっちの方が似合うよ」 そう言って白いハイビスカスを浬の髪に挿した そしてふふっと笑い可愛いと言った 可愛いと言われた浬は男なのに可愛いと言われるのは心外のようでぷぅと頬を膨らませた そんな浬にルシェルは再び笑う 「知ってる?白のハイビスカスは艶美って意味があるんだ 君にぴったりだろ?」 「……俺全然そう言うのとは程遠いと思うんだけど」 そう浬は言うが彼の容姿はかなり綺麗だ それに普通にしていても見るものを誘惑する見た目をしているのだが本人は全く自覚していない だからこそルシェルは心配なのだが彼には伝わっていないらしい 一通りこの植物園を見たあと部屋に戻りお茶をした アンディが入れる紅茶はとても美味しい それと一緒に食べるお菓子もまた最高だ けれどどんなに充実した日々を過ごしても心の中のモヤモヤが取れることはなかった 多分外に出られないと言うのと帳にと藜にも会えないと言うことが影響しているからだろう それでもいつか心の底から笑える日が来るのだと信じている 信じているもののそれがあとどのくらいなのか不安になる 「ねぇ………」 「ん?」 あとどれくらいで藜に会える? 「ううん何でもない」 いつ藜に会えるのかと言いかけてその言葉を飲み込んだ 今は仕方ないのだと、ルシェルを困らせたく無かったから………

ともだちにシェアしよう!