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第58話
現在八尋は帳の家の庭で帳に稽古をつけてもらっており
ゴム制の短剣で練習している
帳の横から剣を向け襲いかかる
しかしそれを読んでいる帳はしなやかに交わされバランスを崩し地面に伏せてしまう八尋
そして今度は帳が剣を八尋に向ける
だが八尋はニヤッと笑い読んでいたとばかりに帳の顔面めがけ蹴りを入れた
だがそれすらも帳は分かっていたようですんでのところで交わすと八尋の心臓に短剣を当てた
八尋の完敗で持っていた剣を手から離し地面に落とされる
「はぁ…はぁ……
クソッ、また負けた」
「だが前よりは格段に良くなった
大振りもしなくなったし先を読む力もついてきた」
「けどアンタに1度も勝てない」
「私に勝とうなど100年早い」
帳の実力を考えても八尋がいくら強くても勝てないのは無理はない
むしろ彼に勝てる方があり得ないのだ
それでも勝てない悔しさはあり
どうやったら勝てるのかと毎日特訓しているもののまだそれは見いだせないままでいる
「最近はやけに勝ちに拘るな」
確かに最近は勝てるまで下手したら飯も忘れて帳に稽古をつけてもらっている
結局勝てないため帳に強制的に終了させられるのだが
だがそれほどに勝ちに拘る理由は決まっている
「強くなりたいから」
「………」
「強くなってあいつを、浬を探さないと
そして謝らなきゃいけないから」
そう、謝らなきゃ……
人を簡単に傷付ける最低な吸血鬼だと決めつけてた
けど本当はそんな奴じゃなかった
本当は健気でお人好しな馬鹿だった
いっつもヘラヘラと笑って
内心辛いことばかりだったくせに
実際知ってたのに見ないふりをした
そしてあいつを傷つけてしまった
これでは吸血鬼と同じではないか
それだけは絶対に嫌だ
変わらなきゃいけないんだ
けれど今浬は何処にいるのか検討もつかない
どこを探さばいいのかも分からない
帳も何も教えてはくれない
いや、本当に何も分からないだけなのかもしれないが、あの帳に限って本当に何も知らないのだろうか?
八尋は昼間帳の書斎に忍び込んだ
何か手がかりが掴めるかもしれないと
帳の机の引き出しを探るが見つからない
本棚を探るがここもまた見つからない
「クソッ」
後は何処にあるだろうか
探した末何も出てこなかった
そりゃそんな重要な情報こんなところに置いておくわけがないだろう
いつまで経っても浬に会うことすら出来ず
もどかしくておかしくなりそうだった
「ごめん、浬………」
八尋の精一杯の謝罪は誰の元へも届かず書斎の部屋に響くだけだった
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