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第64話

久々に思い出した記憶は気分が悪くなるものだった 唯一の救いは藜と出逢った事だけ それまでずっと必死で生きてきた 自分は穢らわしい半吸血鬼だと言われて 酷い扱いを受けてきた それなのに何故吸血鬼は浬を生かしていたのか さっさと殺せばいいものの…… そう言えば吸血鬼達は皆口を揃えて言っていた事がある それは"ヴァイド"と言う人物 それに皆様を付けて呼んでいた その人が関係しているのだろうか? それも凄く気になっていることだ しかし今はどうでもいいくらいに気持ちは沈んでいた ルイスに言われた言葉が今でも離れない そんな中部屋にルシェルが入ってきた 「浬ルイスはもう帰ったようだね」 ルシェルはそう言いながら浬の元へとやって来た すると浬はルシェルに抱きついた そしてすりすりとルシェルの胸に擦り寄る それから浬の頭に添えられたルシェルの手に頬を寄せ自分の手を添える 浬はそれだけではなく今度は手をルシェルの首に回しキスを強請った ルシェルはそれに応えるように口づける 「はっ…ん……はぁ……」 激しい口づけを交わしたあとルシェルは浬をソファに押し倒した 「どうしたの? やけに甘えてくるけど?」 「…………」 「別に言いたくないならいいんだけど」 「ねぇ俺は吸血鬼なのか人なのかどっちなの?」 一番コンプレックスになっていること 吸血鬼からは人と言われ人からは吸血鬼と言われ 自分がなんなのか分からない 分からないから不安になる これからもずっとどちらでもないと言われ続けるのだろうかと 苦しくて苦しくて仕方ないのだ 「別にお前はそのままでいいんだよ どちらの血も継いでいるからより良くなる そうだろう? 雑種の犬の方が丈夫で強く美しい」 「…………」 確かにそうかもしれないが それで気が晴れるわけではなかった 結局回りの見る目は変わらないのだから 折角そう言ってくれたルシェルに申し訳なくて 涙が溢れる 「ごめ…なさ……」 「………いいよ、お前は悪くない 俺が慰めてあげる」 「ル…シェル……?」

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