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第73話

八尋を取るかルシェルを取るか 浬の出した答えは 「俺は………」 その時だった ドンと大きな音がした そして 「ルシェル様!!」 アンディのルシェルの名を呼ぶ叫び声がした なんだと浬は様子を見に行こうとする 「おい、何してんだ 早く、逃げるぞ!!」 「八尋……でも……」 どうすればいいのか思考が停止してしまっている浬 本当ならここで八尋の手を取らなければいけないのだろうがルシェルとアンディの様子も気になる 一方その頃アンディは重症を負っていた そこに現れた男にやられてしまっていた 「だ…な……さま…… かい…り…さま……」 アンディはそのまま気を失ってしまった そして彼はどんどん奥の部屋へと進んでいく そのまま人の気配のする部屋の前に辿り着いた 浬は焦った 扉の向こうからとてつもなく怖い気配がする 今までに感じたことのない恐ろしさだ それは八尋も同じだった 今までにない気配に震えが止まらない このままでは危ないと八尋は浬を呼ぶ 「おい早く来い逃げるぞ!!」 しかし浬は扉の方を向いたきりこちらを向かない 浬は怖くて動くことすら出来なかったのだ そして扉がバンと開かれた そこに現れたのはヴァイドだ しかし浬は彼の事を知らない それよりも目が行ったのは彼の手の方だ 「ぁ……ル…シェル……… ルシェル……いや……」 なんと彼の手にはルシェルが引きずられるように襟を掴まれていた 「ああこれか まだ息はある」 そう言ってヴァイドはルシェルを浬の前に投げた 浬は慌ててルシェルの所へ駆け寄った 「ルシェル!!ルシェル 嫌だ…ああ……なんで………」 「お前かこいつが大切にしているものは」 ヴァイドは浬の元へ寄っていくと 浬の顎をクイッと掴む そんなヴァイドに浬は真っ直ぐ見つめ睨む 「恐ろしいか?」 「…………死ね」 浬はあまりの怒りにそんな言葉をヴァイドにぶつける しかしヴァイドはその言葉が不愉快で今度は首を掴んだ 「この状況でよく言えたものだ 怖いだろう?死ぬのは」 「…………っ」 しかし浬は首を絞められ死の間際にいるにも関わらずじっとヴァイドを睨み付けた

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