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第80話
目覚めたときには辺りは真っ暗
そして何があったのか思い出すと
ヴァイドが浬にしたことが今でも怖くて震える
指を入れられた孔が今でもまだ違和感がある
思い出すだけでも不快で気持ち悪い
何故そんなことをしたのか理解できない
知りたいことは沢山ある
母親の事もルシェルがこの事を知っていたのかも浬は何も知らない
頭に溢れすぎて逆にこの広く何もない部屋と同じように伽藍堂のようだ
それが怖くてしょうがない
この暗い部屋に一人、
ヴァイドは何処にいるのだろう
今は一人よりヴァイドと一緒にいる方が落ち着く気がする
「ヴァイド……何処……?」
暗い部屋には大きな窓がある
暗くなった部屋に月明かりが射し込んでいて綺麗だ
浬はベッドを出て窓の方へ向かう
窓を開け夜風が吹き込んできて心地よい
いっそここから脱け出して逃げられないかと考えるがここは三階くらいの高さ
死なないとしても脱走は不可能だろう
考えるのは皆の事
ルシェルはどうなったのか
八尋はきっと怒ってるだろうな
あの手を取っていたらどうなっていたのだろうか?
思いを馳せながら涙が流れる
何もかも空っぽな感じがする
「泣いているのか?」
「……っ!!」
突然後ろからヴァイドの声がした
振り返るとすぐ後ろに彼が立っていた
「ヴァイド……?」
「お前は私が怖いか?」
「…………」
「お前はあの女にそっくりだ」
「あの女……?」
あの女とは母親の事だろうか
確かあやのって名前だったっけ……?
どんな人なんだろう
知りたい、けれど少し怖い
記憶にない為自分をどう思っているのか分からないから怖い……
「あやのとお前のその目はそっくりだ
真っ直ぐに私を睨む
だから気になった
多分惹かれていたのかもしれないが」
どうにかその目を止めさせたいヴァイドはあやのと交わった
けれど決して真っ直ぐなその目は失われることは無かった
結局協会に怪我を負わされたヴァイドは眠りにつきそれっきり
「ねぇ、母さんは今どうしてるの?」
「病で亡くなったようだな
私が眠っている間に」
「そう……なんだ……」
亡くなった
その言葉が虚しく浬の中に響く
ヴァイドの口ぶりから自分は母に望まれてはなかったのかもしれない
そう思うと余計に心が空っぽになる
自分は誰も幸せにはできないのだと……
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