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第84話

浬について何も手がかりが無い中 八尋は密かに動いていた 夜中に家を出て浬の気配を探っていた しかしそう簡単に見つかるはずもない この世界は広すぎるのだから それでもどうしても浬を探し出すと決めた 浬のヴァイドと共に消えるあの瞬間の顔 切なく寂しそうにそれでいて覚悟を決めたような何とも言えない顔をしていた あんな浬を見てなにもしないでいられるだろうか 否、ここでなにもしないのは男じゃない 八尋はあの日から毎晩外に出ては浬の気配を探し続けている それでも何の手がかりも掴めないままだ きっとこんな風に探していても見つかりはしないだろう しかし何かしないと落ち着かないのだ 「どうすっかな…… こんなんで見つかるはずもねぇし…… はぁ……暑いのになんか寒い……」 こうして今日も見つかることなく家に帰った 八尋が毎晩浬を探しに行ってることは帳は知っていた しかしそれを八尋に止めることも苦言を呈する事もしなかった 分かっていたから…… 浬の事を助けたい、それは帳も同じだ だが帳も浬の行方を掴めずにいた 翌日も八尋は浬の気配を探しに外へ出る この日は休日、学校も休みで討伐の仕事もない だから朝からずっと探しに行く コンビニで買った昼食もそこそこに いろんな所を探すが見つからない そんな八尋はどうやらあまり寝ていないらしい 顔色があまりよくない 「八尋、少しは休んだらどうだ 寝ていないだろう?」 帳が心配してついに口出しをする 「大丈夫、問題ない」 「嘘をつけ このままだと倒れるぞ そうなれば面倒を負うのは私だ」 「…………悪い」 体調がすぐれないのは八尋もよく分かっていた しかしそれでも浬の帰る場所はここだと きっと浬も帰りたいはずだと八尋は思う 「けど、俺は浬を見つけたい」 「知っている だからずっと黙っていたが浬が帰ってきたとき八尋、 お前が体調が万全ではないと意味がないだろう」 「………っ」 分かっている 全部分かっているが 「どうしても見つけたい……」

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