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第94話
「お前を助けに来た」
八尋はそう言った
浬はそんな八尋を前にポロリと涙を流した
嬉しいのもある
けれどそれよりどうしてと言う感情の方が勝った
それはヴァイドは敵に回したら本当に危険な相手だと分かっているから
それなのにどうしてそんな危険を侵してまで自分を迎えに来たのか
その思いが先に来てしまい涙が出たのだ
「なんで……
死ぬかもしれないのになんで……」
「あ゙?何言ってんだ
それはこっちの台詞だ
勝手にあの吸血鬼の所に行きやがって
ふざけんな!!」
すごい勢いでそう怒鳴る八尋の頭には怒りマークが2、3個見える
そんな八尋の勢いにたじたじになる浬
こんなに怒られることなんて無かったから
どうしたらいいのか分からない
しかも声がデカい為ヴァイドに気付かれるのではとヒヤヒヤする
「ほら何やってんだ
早く来い!!」
「ど、どうやって……」
ここは2階だ
まさか飛び降りろと言うのだろうか?
それかカーテンを裂いて繋げて降りるとか……
だがそれではそうしている間に
ヴァイドが来てしまう可能性がある
やはり飛び降りるか……?
「何してる
さっさと飛び降りろ!!」
「…………」
やはり飛び降りるしか選択肢は無さそうだ
しかし二階とは言え高さはそれなりにある
吸血鬼ならこの高さはなんでも無いのだろうが
やはり怖いものは怖い
そして覚悟を決め飛び降りる準備をする
だがやはり怖い中々飛び降りる事ができない
しかし下では八尋が急かす
そして浬はついに勢いをつけて目を瞑って下へ飛んだ
ドサッと大きな音がした
思ったりよ衝撃はなくむしろほとんど衝撃はなかった
目を開けると目の前には八尋の姿がある
「八尋……」
懐かしい姿に浬は再び涙が溢れる
今度は嬉しいのと安心感が一番だ
「何泣いてんだよ
泣き虫な奴だ」
「だって……」
「ほら立て早く行くぞ」
差し出された八尋の手
以前は触れようとしても払われた手だ
けれど今度は違い八尋から差し出された手だ
その手にそっと触れる
そして八尋の手はぐっと浬の手を握る
とても暖かくて大きな手だ
「行こう」
「うん……」
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