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第97話
今なんて言った?
一緒に暮らす?
それは同居と言うことだろうか
それとも、同棲と言うべきか?
浬はそんな事で頭を抱える
「おい」
「は、はい……」
同棲なんて考えるから八尋の綺麗な顔を見て
顔が赤くなる
そして恥ずかしくなって見ていられなくて
下を向いてしまった
「嫌か?俺と暮らすのは」
八尋は自分と一緒にいるのは嫌なのではと思った
当然だ、あれだけの仕打ちをしたのだ
嫌われても仕方がない
しかしそれでも八尋はこの選択をしたのだ
引き返せはしない
浬が嫌がっても八尋は実行すると決めた
その覚悟を決めてこの話を切り出したのだ
「嫌じゃないよ
一緒に暮らすと言うのは嬉しい
でも俺は吸血鬼だよ?
血も八尋のを飲まないと生きていけないんだよ?」
そう、浬は吸血鬼だ
一緒にいると言うのは血を浬に提供すると言う事だ
吸血鬼を憎む八尋にそれができるのか
浬はそれが気がかりだった
「それも覚悟の上だ
俺はお前に酷いことをしてきた
お前は悪くない
分かってる筈なのに
お前に吸血鬼から助けてもらって気付いた
お前はちゃんと人の心を持ってるって
いや、それ以上にお人好しで純粋なんだって
だから罪滅ぼし……かな……」
「……………」
罪滅ぼし……
そんなこと考えなくていいのに
浬はそんなつもりで八尋と接していたのではない
しかしこの八尋の厚意を無駄には出来ない
「けど、吸血鬼を憎んでるのは変わらない
これからも人に害なすやつは殺すし
お前のことも他の奴を襲ったら殺すつもりだ
それでも……
こんな俺だけど一緒にいてくれるか?」
他の人を襲えば殺す
それは当然ではないかと浬は思っている
だから
「はい……
宜しくお願いします」
そう答えた
「良かった
これで断られたらマジでどうすっかと思った
けどもう引き返せねぇし
これからマジで気まずくなるだろうし」
「ははっ
八尋の厚意を無下になんてしないよ
だってこんなに良くしてもらって嬉しいし」
「……お前はほんと馬鹿な奴」
そう言って八尋は笑った
そしてこれから二人の新しい生活が始まるのだった
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