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第105話

一方八尋と浬を逃がした帳 二人が電車に乗ったのを確認するとそこへ協会使者が迎えに来た 「協会の命により貴殿方を迎えに上がりました して、他の二人は?」 当然二人について問うてくる 帳は冷静に彼等に対応する 「悪いが二人には他に行ってもらった」 「どういう意味でしょうか?」 「言葉通りだ ここにはあいつらはいない 会長の指示には従えない」 その帳の発言に眉を顰める彼等 戸惑いを感じつつ取り合えず帳に車に乗ってもらい 協会へ向かうことにした その間も彼等から何のつもりなのか質問されるも 帳は答える筋合いはないと何も答えはしなかった そして協会に着くと藜の待つ会長室へ連れていかれた 彼等から会長の耳へ事情を話し二人がいないことを伝えた 「そう、分かった下がっていい さて帳、どういうことかちゃんと話してもらうよ」 藜は特に焦った様子もなく帳にソファへ座るよう促し帳もそれに従う そして藜は机に肘を立て手を組んだ 「それで?浬は何処だ?」 「貴方に話す義理はない」 「全く……今ごろ反抗期が始まったのかな? 昔はもっと素直でいい子だったのに」 「………」 藜は昔の事を思いだしクスリと笑う 浬がいないと言うのに笑みをみせあまつさえ余裕を見せる藜に帳は不信感を募らせる もしかしたら既に二人の居場所がバレているのではと不安さえ覚える けれど帳は感情を悟られまいと藜の前でも毅然と、落ち着いた様子で彼に対応する 「お前は(まさき)にそっくりだ 可愛い僕の息子 あの子も何かと僕にそうやって意見を言ってきた お前とそっくりだよ」 「藜さん、昔の思い出に浸りたいのなら勝手に一人でやってください 私はこれで失礼します」 わざわざ父の名を出してまでどうしたいのかと 帳は苛立っていた 何せ早くに死んで帳は当時幼かったから正直それほど記憶があるわけではない そんなことを話されても迷惑なだけなのだ 「本当につれない子だ まぁいい、僕はね、お前と柾を想うくらい 浬の事も大事なんだよ」 先程とは違い藜は真剣な表情へと変わり 浬の居場所を教えろと迫る 「それは承知しています ですが私にとっても浬は大事な存在なんですよ 貴方がどれ程浬を想っているのかは分かりません ですが貴方に浬を渡すわけにはいかない」 結局二人の意見は平行線で終わり 帳はこの部屋から去った 「全く……あの子も浬に絆されたのかな」

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