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第110話

浬がバイトに行っている間八尋はパソコンに向かいつつ体が鈍らないようにと鍛えていた そんな時だった 外から嫌な気配がした その気配には覚えがあり八尋は慌てて外へ飛び出していった 夜になると人通りが極端に減る場所 そこから何やら音と声がする 走ってその場所に行くとそこには浬と化け物と化した吸血鬼が戦っていた よくみると他にも女性が倒れている 何となく察しがついてそこへ駆けつける 「浬!!」 「八尋……」 八尋が駆け寄っても吸血鬼は八尋に見向きもしない それどころか浬をひたすら攻撃している そんな奴の動きに浬は着いていって逆に攻撃を仕掛ける 吸血鬼の顔面目掛け足蹴りするが手で止められる だがその直後浬は地面に片手を着き吸血鬼の腹にもう片方の足で蹴った それが効いたようで吸血鬼は浬と距離をとる 「八尋、その女の人助けて!!」 「………!! 分かった」 思わず見入ってしまった 浬がこんなに戦えるとは思わなかったから 以前吸血鬼と対峙したときだってここまでなかった 多分吸血鬼の持つ本能を浬がしてきたからか……… どんな心境の変化があったのかは分からないが 彼の中の獣が呼び起こされたんだ 戦う浬を横目に八尋は慌てて女性の元へ駆け寄った 「う………」 どうやら息はあるようだ だがかなり血を吸われ大分ダメージがあるようで気を失ったままだ 早く病院に連れていった方が良さそうだ 一方浬は吸血鬼と応戦している それに浬の瞳も赤く光っていた 吸血鬼が一気に突っ込んで仕留めようと手を伸ばす すると伸ばされた手を浬は掴み強く握る 「ぁ、あああぁぁっ」 吸血鬼の手はぐしゃっと潰れ血しぶきが舞った そして浬は間髪いれずにそいつの腹を拳で殴り吸血鬼は遠くに吹き飛ばされた そいつはもう立ち上がることができないようで うめき声をあげている 「八尋どうする?」 「……どうせそいつ今まで沢山人を殺してるだろ 生かしててもまた被害者が増える」 八尋の言葉に浬が吸血鬼の元へ近づいていく 呻き声を上げ牙を剝き出しにし威嚇するそれを見て 自分も血を得られなければこうなるのかと思った 浬は哀れなその吸血鬼に手を振り上げる そして――――― その後救急車をよんで二人はそこから立ち去った 「八尋……ごめん……」 「何が?」 「怖くなかった?俺……」 確かに怖くなかったと言えば嘘になる 兄を殺した吸血鬼と同じ目だった けれど 「別に……お前はお人好しの馬鹿だから 問題ない」 そうこいつの性格を知っているから こうやって手を繋ぐことができるのだ

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