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第118話

「はぁ…はぁ………」 辛うじて生き延びたヴァイド 森の奥に逃げ込むが途中でしゃがみこみ木に寄りかかった 「あーあー全く無様ですね 吸血鬼の王とあろうものが」 「お前か……何しに来た ルシェル………」 ここへやって来たのはルシェルだ 無様だと蔑んだ目をヴァイドに向ける 「よくも浬を奪ってくれた」 「ああ、あれか……… ふっ………」 「………!!」 ルシェルはヴァイドの表情を見て驚いた 穏やかに笑ったのだから 自分が今まで一度も見たことのない彼の表情が 浬を思い出すことで笑ったのだ それが彼も浬に感化されたのだと容易に分かった そしてルシェルはここで衝撃的な一言を言い出す 「ねぇ知ってました? あの子貴方の子ではないということ」 ヴァイドの子ではない 確かにルシェルはそう言った しかしヴァイドは顔色を変えることはない 「……ああ、そうだな お前があやのに手を出していたことは知っている」 「………そう 知ってたんですか意外です」 ルシェルはヴァイドの囲っていた浬の母親と交わっていた そして浬がルシェルとの間に出来た子だったと言う事実をヴァイドは既に知っていたのだ ルシェルはヴァイドが嫌いでしょうがなかった 常に誰も寄せ付けないオーラと自己中心的な言動が恐ろしくて憎い だからヴァイドが囲っていると言う人間の女に興味を持った 何がよくてその人間に執着しているのか どんなに痛め付けてもその女は力強い目を向けてくる 気に入らなかった その目は自分を責めているようで気分が悪い それから数ヶ月この女が身籠った 生まれた子は女そっくりな子 けれど何処かルシェルに似ていた 周りは完全にヴァイドの子だと信じていたが…… 触れれば壊れてしまいそうなその子は必死にルシェルに触れようとする ルシェルの指を握るその手は力強くルシェルの心を刺激した ヴァイドが眠りにつきその子は中位の吸血鬼が管理していた どうすればいいか分からない中で殺すことも出来なかった そこでルシェルが出てくれば周りが浬に手を出しかねないと思い中々どうすることもできなかった それにジルにバレれば欲深い彼だ 自分の存在を脅かすのではと思い殺してしまう可能性だってあった そこでルシェルは藜を使った 藜に浬を救いだしてもらい藜に浬を預けた そしてルシェルは誓った いつか浬が安心して暮らせる世界を創ると…… だから王になり吸血鬼の世界を牛耳る事で浬を守ろうとしたのだ 藜も主の命には逆らえない だから仕方なく浬を助けたがいつの間にか浬の幸せを願うようになりルシェルの野望を叶えようと必死になっていた こうして今に至る

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