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第119話

そしてようやく王になれる時が近づいてきた ヴァイドを倒せばルシェルは王になれる そのヴァイドは目の前で弱っているのだから 「殺るのなら殺ればいい もう生きるのも疲れた」 「随分弱気ですね 貴方とあろう人が………」 「私もお前になら王の座を譲ってもよい そう思えたのだから」 「…………」 ヴァイドはいつの間にか浬を愛するようになっていた それが血の繋がり故か、恋してしまった故か定かではないが 愛しいと思うようになっていた だからこそ突き放した 酷く抱いて浬を傷つけた 自分を憎めばいいと思ったから そう思うのはきっと自分のもとへ置いておくには危険だと判断したからだ ジルが自分を狙っているのは知っていた だからもしもの際に彼を巻き込みたくはなかったのだ だがあの子のことだ 自分の身が危険に晒されようとも ヴァイドを助けようとするだろうからあえて突き放した 八尋に連れていかれても深追いはしなかった 寧ろそう望んでいた為、結界だって彼らがやってくると分かった時点で解いていた その方がきっと浬は幸せになると思ったから 「そうですか…… じゃあ消えてください」 ルシェルが手を振り上げたその瞬間 「ダメ____!!」 浬が大声を出してこちらに走ってくる そしてルシェルの前に立ちはだかりヴァイドを庇うようなそぶりを見せる 「かい…り………」 「どう…して……」 ヴァイドは信じられなかった だってあんなに酷い抱き方までして何故自分を庇っているのか理解できなかった それでも浬はダメだと、殺さないでと訴えている 「何故だ?何故お前が………」 「だって父親だから…… それ以外に何もない 俺にとって大切な一人なんだ‼」 「…………っ 馬鹿な奴だ……… 父親は私ではなくそいつだ」 「え?」 ヴァイドの視線の先を浬も見るとルシェルがいる 彼はああそうだよと答える まさかルシェルが父親なのだと驚いた 真実がどうなのか頭が混乱して分からなくなって 暫く黙り込んだ後浬は口を開いた 「……でも、ヴァイドも大切な家族でしょ? ルシェルもヴァイドも大切な家族だ だからもう止めて………」 そんな愛しい浬からそう言われてしまえば ルシェルもその手を下ろさずにはいられない そして浬は自分の腕を噛み血を口に含むと ヴァイドに口移しをした 「死なないで……」 そうヴァイドに訴えた

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