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第5話*

 水をやり終わり、夏樹は植木鉢を抱えてリビングに戻った。どうせ暇だし、『○○の種』の観察日記でもつけてみようと思ったのだ。  早速筆記用具を出そうと、持ってきた鞄をガサガサ漁る。  すると突然、後ろから誰かに肩を叩かれた。 「うわあっ!」  びっくりして後ろを振り返る。途端、夏樹は驚愕に目を見開いた。 「……え?」  無数の蔦や蔓が、奇妙にうねりながらこちらを見据えている。緑色の瑞々しい植物たちが、先程の植木鉢から大量に生えてきていた。 (何、これ……?)  一体これはどういうことなんだ? なんでこんなものが突然? 俺は夢でも見ているのか……?  驚きのあまりフリーズしていると、一本の蔦が夏樹の足首に絡み付いてきた。 「……あっ!」  そのままズルズル引っ張られ、それを合図に他の蔓たちも次々に身体に絡んでくる。 「い、いやだっ! 放せ! 放してっ!」  必死に抵抗したものの、思った以上に植物たちの力は強かった。服の裾から蔦が入り込み、内側から豪快にシャツを引き裂かれてしまう。 (う、嘘だろ……!?)  あの『○○の種』って、こういう植物が生える種だったのか!? そんなふざけた種が存在するのか!? よりにもよって、なんでそんなものが今生えてくるんだよ!?  夢だと思い込みたかったが、絡み付いてくる植物の感触はやたらとリアルだった。どこかぬるりとした触手が引き裂かれた衣服の下に潜り込み、胸元や脇の下をくすぐってくる。 「あっ、いや……っ!」  慌てて払い除けようとしたが、両手首に別の蔦が絡まり、頭上でまとめて固定されてしまった。  本格的な身の危険を感じたのも束の間、太ももや胴部にも複数の触手が巻き付いてきて、ひょいと身体を持ち上げられてしまう。  全裸の状態で触手たちに宙吊りにされ、夏樹は恐怖の悲鳴を上げた。 「やめて! 誰か助け……うぐっ!」  夏樹の口を塞ぐように、太い蔦が口内に入り込んで来る。一気に喉奥まで入って来られて、思わずえずきそうになった。

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