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第13話
「……で? あの植物は結局なんだったんですか?」
リビングでピザトーストを齧りながら、夏樹はじっとりと市川を見た。
何時間気絶していたのか知らないが、目が覚めた時にはパジャマを着せられた状態で市川のベッドに寝かされていた。身体も全部綺麗にされており、大量に出されたはずの種の気配も感じなかった。
「先生……」
腰痛を堪えてベッドから起き上がったら、リビングで市川がせっせとゴミ袋に植物を詰め込んでいた。その中には、シワシワに干からびた種もあった。
「お! 身体はもう大丈夫なのか? 無理しないで寝てていいぞ」
「いえ……大丈夫です。俺も手伝います」
ゴミ袋五個分にもなった植物たちを全部ゴミ置き場に出して、フローリングの掃除をしたところで、ようやく一息ついたのだ。時刻は午後二時を回っていた。
一仕事終えたら急にお腹が空いて来て、夏樹は市川に昼食を作ってもらった。
「ごめんな、夏樹。まさかあんな植物が育つとは思わなくてさ……」
市川がコーヒーを飲みながら、申し訳なさそうに謝ってくる。
「なーんか嫌な予感がすると思って、部活を午前中で切り上げて帰ってきたらこの有様だ。ったく……夏樹を襲うなんざ、ホントにけしからん植物だったな!」
「…………」
そのけしからん植物の種を買ってきたのはあなたなんですけど……とツッコみたい。
「それはそうと先生……あの白い粉は何だったんですか?」
「ああ、あれは買い溜めしておいた塩だよ」
「……塩?」
「うん。本当は全部まとめて焼却処分してやりたかったけど、さすがにあの状況で燃やすわけにはいかないだろ? だから塩撒いて弱らせたのさ。やっぱり植物には塩がよく効くな」
「はあ、そうですね……」
なるほど、塩か。確かに人体への影響はないし、元気のいい植物には一番効果的な道具かもしれない。
だけど夏樹には、些細だけどひとつだけ引っ掛かっていることがあった。
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