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第10話 奏太とリュウ

 のろのろと立ち上がると瑞樹が立ち上がるとシャワーへと向う。急にこれからの事を考えて落ち込む、自分から言い出した事なのに。  何で、あんな事言い出したのかな。……馬鹿だ俺。  嫌われたいなら、あのまま無視して立ち去れば良かったはずだ。選択を間違えた。  ガタンと浴室から瑞樹が出てきた。身体にピリッと緊張が走った。  「奏太……」  「悪い、その名前では呼ばないでくれる」  「無理、俺にはお前はいつまでもあの時と同じ奏太でしか無い」  瑞樹が近づくと、心音が大きくなる。ゆっくりと長く息を吐く、ここが頑張りどころ。  どこまで平気な顔ができるのかな俺。  ベッドが軋む、心が壊れそう。理屈じゃ無いんだ。  心は何にも縛られないんだと思い知る。  「奏太」  名前を呼ばれて身体がびくんと反応する。瑞樹の指が権藤につけられた縄の痕をつつっとなぞった。  この五年半、常に暗闇の中で縛られて抱かれてきた。こんな明るいところで瑞樹に触られると高校生の時の感覚が蘇ってきて苦しくなる。  「俺のせいだ……こんな事しているなんて」  「瑞樹、するの?しないの?どっち。俺は誰のせいだとも思ってないし、俺が好きでこういう事してるとは思わないわけ?」  瑞樹の手が身体に回る、抱き寄せられて近づいて来る。あ、口付けられる。そう思った瞬間に顔をそらした。  「キスはだめ、それ以外なら何でもどうぞ」  そう言うと、瑞樹に微笑んでみせる。自分の感情がコントロール出来なくなるのは困るんだ。  瑞樹はゆっくりと俺の身体を倒してきた。  主導権を取られる。このままだと、まずい。  瑞樹の首にしがみつく、バランスを崩した瑞樹と上下を入れ替わる。  驚いた様子の瑞樹の身体の中心を口に含む。俺に欲情してくれているのが分かる。でもそれ以上に自分が瑞樹に欲情している。  「そ、奏太!やめ…くっ」  一度解放してやると、瑞樹の様子を伺う。  「払った金の分は楽しんでいってよ」  そう言うと、瑞樹が苦しそうな顔をする。瑞樹が俺を求めてくれるのは嬉しい。でもそれ以上に苦しい。  「奏太、やっぱり止めようこんな事。何もしなくて良い。お前、苦しそうだよ。ただ朝まで一緒に居てくれれば良いから、だから朝目が覚めたらいなくなるのだけは勘弁して」  「サラリーマンに七万はきついだろ。楽しんでってよ、それで二度と会わないから」  「金がなきゃ会ってくれないって事か……」  「そう、俺はもう以前の俺じゃ無いんだ」  「わかった」  これで終わった。これで良かったんだ。瑞樹といると調子が狂う、全部投げ出してすがりつきたくなる。  これで最後だから、萎えてしまっている瑞樹自身を口に咥えるとゆっくりと舐めあげる。  男の体なんて直接刺激を与えれば、すぐに反応する。勘違いしちゃいけない、瑞樹は俺に欲情してるのじゃ無い。行為そのものに感じてるだけだ。

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