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第11話 次の約束

 されるがままの瑞樹をゆっくりと口から解放すると、身体の上に跨る。  いつでも受け入れられるようにちゃんと準備は済んでいる。あの頃とは違う。  自分の重さを利用してゆっくりと瑞樹を身体の中に埋めていく。  「うっ……」  瑞樹の発した小さい声にぎゅっと身体が一瞬縮まる。ふうっと、息を吐き調整しながら奥へと導く。  感じてくれているのだろかと瑞樹の方へ目をやると、ふと視線が絡む。少し目の周りが赤くなっていて、その瑞樹の視線だけでイきそうになる。  「どうして欲しい?」  そう聞くと腰を掴まれ強く突き上げられた。  「奏太が丸ごと全部欲しい……」  その台詞に理性も全て飛びそうになる。一晩の夢に酔っても許されるのだろうか……。  瑞樹の将来のため、俺自身が惨めに苦しまないため、今日で全てを断ち切る。  明日の朝までなら、金で買われたという言い訳があれば、許されるのかな。  瑞樹の顔は今にも泣きそうで、苦しそう。だから俺は笑わなきゃ。こんなに苦しいセックスは初めてだ。  ……身体を縛られるより心を縛られる事の方が辛いんだ。  瑞樹の息が速くなる。身体の動きを合わせてやる。瑞樹……俺の中に全部頂戴。  「どこへ行くつもり」  声をかけられて驚いた。俺の中で絶頂を迎えた瑞樹の呼吸が落ち着いて、柔らかな寝息に変わるのを待ってそっとベッドから離れたのに。  「……もう用済みでしょう」  「一晩と言ったよな。明日の朝までここにいろよ」  「まだ、ヤるの?確かに一晩とは言ったけど……」  ため息が出る。  「朝まで一緒に眠りたい、それだけ。契約だよな、奏太逃げるなよ」  「……だから奏太じゃない」  「とにかく、契約は契約だ」  「解った、身体を流したらすぐに戻る」  朝まで誰かと一緒……一度もない体験。違和感しかない。  一晩中、落ち着かず眠れない。目を閉じてみても睡魔は一切やってこない。それは瑞樹も同じなのかも知れない、どこかで視線を感じている。  白々と夜が明けるまで結局一睡もしなかった。朝日がこれほど、待ち遠しくて切なかったことはない。着替えて支度をする、そして最後に瑞樹に声をかけた。  「じゃ、契約はここまでだから」  「連絡先教えて」  「友達としてはもう会えないから、ごめんね瑞樹」  「来週、またここで。今、同じ部屋を押さえた。七万だよな。今は、持ち合わせないから先に渡すことはできないけれど」  一体どういうつもりなんだ。会う度にホテル代と七万。サラリーマンに払える額じゃない。来週も……何がしたいというのだろう。  「無理だよ。瑞樹、わかってるでしょう」  「待ってるから。来週、金曜日の夜にここで」

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