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第3話 想い

 高校二年生で同じクラス。  二年から三年へはクラス替えは無い。つまり高校三年間を一緒に過ごすということ。  一年の時からの親友、いつも一緒。  瑞樹に触れたいと思っている俺が、瑞樹に抱かれる事を考えてしまう俺が親友。  もしも頭の中か見えたら、気持ち悪いと翌日から口も聞いてもらえなくなると思っていた。  だから隠し通すはずだった、隠せているはずだった。  他の女子と付き合えと言われ、腹が立った。隠しきれない思いが言葉になって零れ出てしまった。  「えっ?奏太、お前……何、言ってん…の」  「だよな、忘れて。はい、今のは冗談」  やってしまった……冗談に聞こえただろうか。  もしも瑞樹がこれで俺を避けるようになったら……それはそれで仕方ない。  きちんと振られて、届かない想いを浄化させなきゃ次には進めない。  三年間同じクラス。高校の時は仲良かったなと、それだけの友達それでいい。卒業して、いつの日かそう言えばそんなやつもいたなと思い出す。そういう存在。  中途半端に近づきすぎて拒絶されるより、友達のまま終わりたい。  「いや、その。……さっきの……」  「だから忘れて」  「ってか、俺……あーもう」  頭をガシガシと掻きながら瑞樹が赤くなっている。この反応はまさか。  瑞樹は下を向いてゆっくりと息を吐くと、顔を上げ意を決したように口を開いた。  「本当、その好きって……友達ととしてじゃなくて?」  「俺は……止めよう瑞樹。気持ち悪いよね、ごめん」  「どうしよう。俺、俺の片思いだとばっかり……」  心臓に爪を立てられ鷲掴みにされた、苦しい。嬉しすぎて涙か止まらない。  「嘘……だろ」  それ以上、お互い話をする余裕がなくなった。どちらからともなく近づいた夕暮れの学校の部活棟の裏。軽く触れるだけの拙いキス。  慌てて離れると周囲を見回して誰もいないことに安堵する。お互い見つめあってくすくすと笑う。  聞こえてくる野球部の練習の声。春の生暖かい空気。グラウンドの土埃の匂い、全てを鮮明に覚えている。  その日から俺たちは親友から恋人になった。戻ってきた日々は今までより柔らかい陽に包まれていた。ここちよい日だまりの中にいるような甘い日々だった。    大学の進路調査票をひらひらさせせながら、瑞樹は俺の顔を見ていた。  「大学さあ、どこ受けんの?」  瑞樹と同じところ、心の中でそう答える。  「さあ?」  そう答えて、瑞樹の反応を見る。ちょっと不服そうな顔がかわいい。これからもずっと二人で一緒にいられるとその時は思っていた。  ……永遠なんて甘い言葉を信じていた。

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