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第9話

「奥様、ラファエル様。ガブリエル様からのご遺言がございます」 まだ亡くなったばかりのガブリエル様のベッドの周りで悲しんでいる奥方達へ向けて、私は託されていた手紙を取り出した。 「『私の愛しい妻セレスティーヌ。私の天使ラファエル。そして、私の家族である皆。私が先に旅立つことを許してくれ。そして、最後の願いだ。私のために泣かないでおくれ。愛しい者の涙は辛い。どうか笑顔で居て欲しい。』」 自分よりも他者のことを考える、ガブリエル様らしい言葉だ。 皆、生前のガブリエル様を思い出して、涙を零した。 私は冷静に、静かに言葉を繋げる。 「『それと、私はきっとひどく痩せこけた姿になっているだろう。そんな姿を皆に見られ続けるのは恥ずかしい。アランに全て頼んでおいたから、どうか皆はいつも通り過ごしておくれ』。…ガブリエル様は、最後に意識をなくされる前に、私へ仰りました。病人と一目で分かるこの姿を皆に焼き付けたくないと。亡くなった後のことは全て私が行います。奥様、ラファエル様。どうぞ、この場は私にお任せ下さい。そして、今のお姿ではなく、ガブリエル様の笑顔を思い出してあげて下さいませ」 止まらない涙をハンカチーフで拭きながら、奥様は弱々しくも頷き、ラファエル様を連れたって部屋を出て行った。私以外の召使い達にも奥様達の傍にいるよう伝え、部屋には私と亡くなったガブリエル様だけになった。

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