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第10話

 悲しみで満たされていた部屋は、急にしんと静まり返り、とても冷たく感じた。 私は部屋の鍵をかけ、手紙をサイドボードの上に置いた。 ベッドの端に座ると、ガブリエル様のお顔を覗きこむ。 ガブリエル様がご心配したように、それは病人の顔をしていた。しかし、死人の顔なのかは実感できなかった。まるで静かに眠っているかのような――今にも起き出して私へ笑みを向けそうなお顔に、そっと手を添える。 温かかった。 痩せこけていたが、柔らかく湿り気のある肌をしていた。 私はそのまま肌の上を滑らせ、ガブリエル様の喉に触れ、パジャマの前を開いた。現れた鎖骨を通り、胸へ手を置く。温かいのに、何も動いていなかった。 それでも、私は触るのを止めなかった。 布団をはぎ取り、下着も脱がせ、何も身に纏わないガブリエル様の姿をベッドの上に晒した。 それから、私も全ての服を脱いだ。 そして、ガブリエル様の上に私は乗った。 細く艶のなくなった金の髪を撫でながら、瞼の閉じたガブリエル様を見つめる。 「…ガブリエル様」 そっと彼の耳元で囁いてみる。 思っていたよりも掠れた自分の声に、私は戸惑った。 「ガブリエル様…」 もう一度呼ぶ。しかし、声は返ってこない。 瞼も開くことはない。

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