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陽太の冒険

山際陽太 18才。 1日目。 大切な人に別れを告げ大阪より新幹線に乗る。 京都にて護衛を振り切りバスにて新宿到着。一路、オカマバーへ。 二日目。 昼間は東京タワーやお台場に行き夜はゲイバーへ。 三日目。 昼間はスカイツリーや渋谷へ行って夜再びゲイバーへ。 その後山𥔎に連れられホテルのこの部屋へ。摩天楼に見惚れ、めくるめく世界へLet's go!だったはず。 えっ?えっ?えっ? 四日目。 大きな窓から見える、ビルの谷間に沈む夕日が美しいね。昼間は記憶にございません。 ここまで、Are you OK? 今現在の僕。 目覚めた時は声も出ず、奏多に水を飲ましてもらい発熱のため冷えピタをおでこに貼りつけている。 で…。 ベッドにへばりついた状態で、椅子に座って脚を組んだ奏多に睨まれています。 ど・ゆ・こ・と? 「説明してもらおうか、陽太」 いや、説明して欲しいのは僕の方です! とは、口が裂けても言えない。 それほど奏多は憤怒の表情をしていた。 「………」 「山𥔎と何をするつもりだったんだ?」 正直に言うべきなのか否か。 いや、ここは正直に言おう。 「…えと。SEXするつ…「ガァン!」」 最後まで言えなかった、選択を間違えたようね…。クリスタルの灰皿が身体の上をピューンと飛んでった。 壁に穴開いたよね?開いたよね! 蛇に睨まれたカエルってこのこと⁈ 「陽太」 今まで聞いたことのない低くて威圧感に満ちた声。 「ご、ごめんなさい」 条件反射的に謝った。 「謝るようなことをしたのか?」 「………」 「答えろ」 クタクタになった僕の息子さんが、立ち(勃ち?)直れないぐらい恐ろしい表情。 極道半端ねえな。 でもね。 ムカムカムカムカムカ!胸が怒りで満ちてくる! 「かなたんには関係ないだろ!」 「なんだと?」 サァーと身体の血の気が引いた。それほど、低くて凍るような声だった。 ま、負けるもんか! 「ぼ、ぼ、僕を追い払おうとしたくせに!」 「そんなつもりはない」 「じゃ、どんなつもりだよ!僕を捨てたんだから、ほっといてよ!」 そう、叫んで背中を向けたかったけど、頭や首はもちろんのこと、身体中が痛くて重くて怠くてお尻になにか挟まっているみたいで、一ミリも動けない。 カ、カ、カエルだって怒るんだ! 怖くなんかないぞ! 思いっきり睨んだ。 「それで睨んでつもりか?」 そうだよ!悪いか!それよりも。 「どうして、ここにかなたんがいるの?僕、山𥔎さんと来たよね?」 「お前、あれで逃げれたと思ったのか?」 「京都からずっと見張ってたの?」 奏多はそれには答えずタバコを吸い斜め上に紫煙を吐き出す。 その仕草がまたカッコいいから余計に腹が立つ。 「かなたん!正直に言ってよ!」 「そうだとしたら?」 怒るに決まってるじゃないか! 「なんで!」 「無防備にこんな事するからだろうが!」 「僕の勝手だろ!」 「アホかお前は!お前みたいな(なり)の奴が男漁りにきてタダで済むと思ってるのか?騙されて風俗に売られるのがオチだ」 それを言われたら実際騙されたわけだからグッと言葉に詰まるけど。 「でも!」 「陽太」 容赦のない冷たい声。冷酷な表情。絶対零度の視線に射抜かれた。 「なめんじゃねえよ」 陽太の知らない奏多。 身体が震える。瞳をギュと瞑った。 ブリザードの中に放り込まれた僕。 はい、僕が悪かったです。 「ごめんなさい…」 「陽太」 呼ばれて、瞳を開ける。 「二度とするな」 「はい」 上掛けを頭まで被って顔を隠した。 けれど。まだ、訊きたいことがある。 でも、怖い。でも、訊くなら今しかない。 恐る恐る顔を出して。 「かかかなたん。ここここ、肛門に薬入れたの…」 「俺だが?」 「めめめめかくし、されてから、かなたん?」 声が震える。 そうだと言って。 言葉足らずでもわかったのか、奏多はニヤリと笑った。 あぁ。 目頭が熱くなったと思ったら、あっという間もなく涙が溢れた。 そうか、かなたんだったのか。 最初から……。よかった…。 ひとしきり泣いて。 泣きじゃくるという表現が当てはまるぐらい泣いて。 「気が済んだか?」 奏多がベッドに座り、タオルでゴシゴシ涙と鼻水でドロドロの顔を拭いてくれる。 ちょっと乱暴だよ。 それから陽太の髪の毛を梳いて、頬をスリスリ撫でてくる。 眠った時しかしてくれなかった事。 「怒ってる?」 上目遣いで問えば。 「ああ、めちゃくちゃな」 「心配してくれたの?」 「何処の馬の骨に喰われるか気が気じゃなかった」 「それって…」 「もう認めるしかないだろ?」 奏多の唇が落ちてきて啄むような口づけをひとつ落とす。 「お前、極道の俺の傍にいる覚悟はあるのか?」 「ある!」 「…即答かよ」 「ずっと一緒って約束しただろ!」 「したな」 「極道に二言はないだろ!」 「ないな」 奏多が声を出して笑う。 幼い頃に見た優しい笑顔だ。 「かなたん、恋人にしてくれる?」 「ああ」 「ほんと?」 「疑り深いな」 「だって」 今は今は傍にいれるだけでいい。 もっともっと奏多のことを知って。 奏多の役に少しでも立てるように、僕頑張るよ。 「かなたん、大好き」 「陽太」 奏多の唇が僕の唇を捉えた。 濃厚な口づけは舌使いが難しい。経験値0だからなぁ。 勉強しなくちゃな…。 こうして、僕の冒険は五日で幕を閉じた。 あっ!そうそう、熱はその日のうちに下がったけれど、翌日まで子鹿ちゃんで奏多に世話をしてもらいました まる。

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