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奏多の罪 ② R18

玄関を入った所に見知らぬ靴があった。 「おかえりなさいまし」 玄二が頭を下げる。 「伸也はまだいるのか?」 「はい、リビングでお茶を飲まれています」 奏多の脱いだ靴を玄二が揃えていた。 今日、稲郷の本邸に行ったからだろうか。何か足りない気分になり、何故そうなったかまで思考が遡り眉間に皺が寄る。 そう、本邸で若衆が屈みどうぞと言った先にあった物がここにはない。 スリッパ。 二つ目のマンションもそうだったが、このマンションも、フローリングの床にも関わらずない。 勿論客用スリッパもだ。 二つ目のマンションで舎弟が気を利かせて玄関に置いた客用スリッパに陽太が怯えて泣いた。 だから、ここの床には床暖房を張り巡らせている。 因みにレトルトの食料品も我家にはない。陽太があの銀色に輝くパックを見てフリーズして頭を庇ったから。 リビングのソファに伸也は背筋を伸ばしコーヒーを飲んでいた。 扉の閉まった寝室。 陽太は眠っているのだろうか? 「陽太は寝たのか?」 「眠剤を処方しました」 「そうか」 伸也は人龍会お抱えの医者だ。もっとも本人にそのつもりは更々ないらしいが。奏多の会社のビルの二階で開業している。 一応外科が専門だが、何でもござれの医者扱いをしている。よって伸也の口癖は『僕は外科の医師ですが?」 だがいつも瞬殺されている、主に新田に。 奏多は一人用ソファに背中を預けて、息を吐いた。 「で、陽太はどうなんだ?」 「フラッシュバックを起こしたようですね」 「やっぱりな」 「フラッシュバックの引き起こす要因をご存知なんですね?」 「ああ、元凶に会ったみたいだな」 「元凶ですか?」 「あいつを虐待していた奴だ」 「ああ、それで」 伸也が難しい顔をする。 「元凶にもう二度と会わせない。 陽太を心療内科へ行かしたほうがいいのか?」 「う〜ん。今は様子をみましょうか。また起こるようなら専門医を紹介しますよ」 「ああ、わかった」 急を要しないと分かり少しホッとする。 「あなたが十分に愛情をかけてやることが一番の治療になりますよ」 伸也はくそまじめな表情で言う。 どこまで本気で言っているのか? 「期待に応えるのはやぶさかではないな」 しらっとそう返した。 「請求書は明日割増で持っていきますから」 と、言い残して伸也は帰っていった。 グラスに入った冷たい水を奏多の前に置く玄二。 膝をついてその場で控えている。 「女についてた奴、見覚えあるか?」 「いえ、同業者だと思いますが」 「見つかったら面通しさせるわ」 「はい」 グラスの水を一気に飲み干す。 「玄二、明日から客間に住め」 陽太が言うようにとてつもなく広いこの住戸。客間は1 LDK仕様。ワンルームマンションの部屋が丸ごと一戸入ったかんじだ。 「はい、よろしいんで?」 「ああ。玄二、陽太の側を離れるなよ」 「はい、絶対に離れません」 「頼むな」 「はい」 奏多に僅かでも功績があるとすれば、それはこの玄二を見つけ出し陽太につけたことだろう。 玄二には陽太を無条件に任せられる。 佐伯にも任せることは出来るのだが、いかんせん、奴はヤクザよりも胡散臭い。 「今日は帰れ。明日引越してこい」 「はい」 「佐伯を部屋に引っ張りこむなよ」 「…………」 年齢の割にいつも冷静沈着な玄二も流石に眼が泳ぐ。 「俺が知らないと思ったのか?」 「いえ」 「あいつの吐く毒にやられるなよ」 ニヤリと笑う奏多。 佐伯の酷いいわれように笑うしかなかったのか、玄二が引き攣った笑顔を見せた。 温めのシャワーを浴びて。 スウェットだけを履いて陽太の眠るベッドに腰掛けた。 二人で眠るために用意したキングサイズのベッド。 陽太が玄二をお供に関西最大級の家具屋に行って購入してきた。 届いた時の喜びようといったらもう……、ベッドで飛び跳ねて幼稚園児並みだったらしい。 玄二が真剣に将来を心配していた。 用途をわかっているのか、いないのか、聞いたこっちまで心配になった。 そのベッドで、ちんまりと掛け布団を巻き込んで丸まり顔だけを出している陽太。 幼い頃と同じ顔をして眠る。 頬に涙の筋がある。眠ってからも泣いたのだろうか。 「最近はよく泣くなぁ、お前は」 涙の筋を指の腹で拭って。 早速の試練だなぁ、陽太。 二つ目のマンションに引越してからは玄二が側にいて。 トラウマになりそうな物を排除したら何もなかったように楽しそうにしていた。 でも、された事忘れるわけないよな。 巻きついている掛け布団を引き剥がし、隣に滑り込んで陽太を抱き込んだ。 陽太はあったかい。 可愛い俺の陽太。 陽太が小五に進級した頃から学校行事は美和が行くようになっていて。それでいいと思っていた。 それまで通り佐伯に頼んでいたら…。 佐伯なら気づいたかもしれない、陽太の受けていた仕打ちに。 また、タラレバの後悔が胸に突き刺さる。 強く抱きしめすぎたのか、陽太が身じろぎをする。 「すまん、陽太」 腕を緩めたら今度は無意識に陽太が奏多の胸に潜り込んできた。 顔をくっつけて鼻をペチャンコにして。 思わず頭を抱え、てっぺんに口づけを落としていた。 このままじゃあ駄目だな、陽太。 もう、終わらせないとな。 せめて、来客用スリッパを置かないと組長や姐さん呼べないぞ 姐になるんだろ?頑張れ、陽太。 あいつは一体何をする気なんだろうな。 今日会ったのは偶然なのか? 身辺に気をつけろってか? 大丈夫だ、陽太。 今回はきっちり始末してくる、あいつを。 陽太を抱きしめながら、奏多の思考は過去へ飛ぶ。 勿論、美和が陽太にしたことは許せなかった。 腹わたが煮えくりかえった。 三年間付き合った女だからという憐憫の情などこれっぽっちも湧かなかった。 殺そう、そう思った。 だが、美和は堅気の女。 そして。最初の一年半は本当に陽太を可愛がってくれた。 喜ぶ陽太を見て、奏多も嬉しかった。 美和を畜生にしてしまったのは、奏多のせい。 下っ端の者に放り投げて好きにさせてから、大阪を出ることを条件に放免にした。 その後四国に帰って一年後、一般人と結婚したはず。その段階で監視を外した。 冷静に今、考えても、奏多は恋愛感情から美和と付き合ったのではなかった。嫌いではなかったけれど。 要は玄二と同じ扱いをしていたのだ、恋人という名の元に。 陽太ありきで奏多は動いていた、無意識にでも。 美和はそれを敏感に察した。 贈物もした、優しい言葉もかけた。 だが、それは全て陽太に絡んだ事への礼だった。 「陽太の参観に出てくれてありがとう」 と、ネックレスを渡し、 「運動会の弁当を作ってくれてありがとう」 と、指輪を渡した。 陽太の行きたい温泉に一緒に行き、陽太の行きたい水族館に一緒に行った。 そして、 「愛してる」 と言って抱いた、陽太の面倒を見にきた日に。 陽太のいない日に美和を約束することも呼び出すことも無かった。 そう、奏多は美和を恋人だと口にしながらも都合のいい女として扱っていたのだ。 一言で言えば狡い男だった奏多。 だから、前回は奏多なりに譲歩はした。 六年も経った今何故、陽太に近づく? その理由は何なのか? 美和と一緒にいたヤクザはどこの組の奴なのか。 陽太の髪を弄びながら、奏多は闇の向こうを睨みつけた。 カーテンの隙間から朝陽が漏れて光の線を生み出している。 腕の中の陽太が身じろぎをする。 目が醒めたのだろう。 しばらくジッと奏多の胸に頬を寄せていたが。 奏多も静かに抱きしめていた。 何かこそばゆいので薄眼を開けると、そぉっと舌を出して奏多の薄い胸毛を、チロチロと舐めては、にやけている。 お前…、薬で強制的に眠らせられたんじゃないのか? 心配でこっちは殆ど眠れなかったというのに………。 奏多は狸寝入りを決め込んだ。 調子に乗って陽太は大胆になる。次は乳首をペロペロと舐め出した。 あー。ムズムズする…。 「あ、乳首勃った」 「字が違う!」 「うわー!!」 陽太の腋に手を入れて一気に引き上げた。 瞳をまん丸にしてアワアワと慌てる陽太。 「もう、大丈夫なのか?」 「う、うん」 「舐めて美味かったか?」 笑いながら言うと、恥ずかしそうに 「うん!」 「そうか」 頭をゲンコツでグリグリしてやる。 ふと、真面目な顔をして 「かなたん、ごめんね」 「何で謝る?」 「だってさ…」 「お前は謝ること何もしてないぞ」 「でも…」 「だっても、でもも要らんわ」 それより、お前をくれと、奏多は陽太の唇を奪う。軽い啄むようなキスから、そっと口内に侵入して、貪るようなキスに変える。逃げる舌を追いかけて、絡めて、吸い付いて。ペチャペチャと、隠微な水音をさせて。 頬を真っ赤にして息も絶え絶えの陽太。 「激し…」 「嫌か?」 「いや…じゃない」 次はこっちなと、奏多は陽太の耳に唇を寄せる。 「あー…」 耳朶を甘噛みし、耳殻に息を吹きかけ舐めて、耳孔に舌を滑り込ませて。そうしながら陽太のパジャマを脱がせた。 「腰を上げろ」 一気にズボンと下着も引き下ろす。 「かなたん、凄技…」 「それを言うなら早業」 また、唇に戻り貪り尽くす。 唇を離した時には陽太の可愛い唇はぷっくりと膨らみ赤く色づいていた。 陽太の細い首筋を唇でなぞって濡らして。赤い跡をつけて。 「所有印な」 鎖骨に吸い付いて。また、赤い跡をつける。 「ああ…」 左の乳首を摘んでは引っ張り指先で押し込んで。右の乳首は舐めて吸って甘噛みして。 奏多の手は陽太の快感を巧みに引っぱり出していく。 「もう、いやだ…」 「こんなになってるのに?」 奏多の手が陽太の下腹を弄る。 「だって…」 「乳首も硬くなってるしな」 ツンツンと乳首を弾いて。 「もう……」 「東京から帰ってから、こんな事してないんだから、溜まってるだろ?」 「た、た、溜まってない!」 「そうかぁ?俺は陽太を抱きたかったぞ?」 陽太の顔がますます赤くなる。 真っ赤な頬に真っ赤な唇、潤んだ瞳。 奏多の嗜虐性を煽る。 「かなたんのバカァ…」 と、言いながら手を伸ばしてくる、陽太。 可愛いなぁ。可愛い過ぎて困る。 その手の甲にキスを落として。 手を肩に置かせて奏多は下がっていく。 陽太の可愛い桃色ペニスはもう反り返っていて、甘い蜜を滴らせている。 その先端にキスを落とす。 「あん…あ」 陽太の可愛い啼き声。 もっと啼かせたい。 桃色ペニスをスッパリと咥えこんだ。 ジュポジュポと音をさせ、唇を窄めながら上下させる。先端の切れ目に舌を差し込んで。 無防備な双珠をやわやわと揉んで。 「あっ……あ……やぁ」 口を離し陽太に問いかける、指の腹で先端を弄りながら。 「陽太ぁ、気持ち良かったら何て言うんだ?」 「きもちい…」 「ほら。一回イっとけ」 東京から帰ってからまだ一度も陽太を抱いていない。 あっちで抱き潰したせいで、こっちへ帰った後も数日ベッドがお友達になっていたし、その後は大学の準備、引越しと目まぐるしく日々を過ごしていた。 奏多も思いがけない四泊五日の東京行きで仕事が溜まっていた。 また、蜜を溢れさすペニスを口に咥えて、唇でキュッと締め上げて、搾りとった。 「うっー…」 口内に青い味が広がる。ゴクリと嚥下して 「前より濃いぞ?」 「…言わない…で」 肩で息をしながら、唇を震わせ腕で顔を隠す陽太。 「ほら、可愛い顔を隠すな」 「…だって」 陽太の腕を掴みチュッとキスを落として、ヘッドボードの棚からジェルとゴムを取り出した。 陽太の腰にクッションを敷き、脚を奏多の膝に乗せて、ジェルを継ぎ足しながら丹念に可愛い蕾を解していく。 「…かなたん、手慣れてる…よ…ね」 ハッハッと喘ぎながらも文句を言う。 照れも手伝ってか、口調がぞんざいだ。 「妬いてるのか?そりゃ、お前より大人だからな」 陽太の艶めかしい痴態を見ながらするこれは、これで結構楽しい。 日頃の幼い仕草や言動とのギャップが堪らない。 既に陽太にドップリ溺れている自覚は十分にある。 ここまで丁寧に解すのは陽太、お前だけだぞ。今までの相手は自分で準備してたからな。 心の中で呟いて。 指を二本三本と増やして襞を拡げていく。 「あっ!………あ、あ、あ…」 陽太のいいところを指の腹で押してやり、陽太の嬌声を上げさせる。 「何て言うんだ?」 「…きもちい、あー…」 陽太のペニスがまた、ムックリと勃ち上がってきた。 「もう、出すなよ。自分で押さえとけ」 何度も出すと疲れるからな。今日動けなくなるだろ? じゃー、朝からするなと叫ばれそうだが。 陽太に自分のペニスを掴ませる。 その間に奏多も自分の反り勃ったペニスにゴムを被せた。 「力抜けよ、挿れるぞ」 「かなた…ん」 少しずつ、慎重に奥へ奥へと押入っていく。前回はあれだったから、今回は優しくと、気をつけて。 相手違えばここまで気を使うのかと、我ながら可笑しくなる。 陽太の手がペニスを離れシーツを掴む。 陽太の脚を肩に掛け根元まで挿れきった。 「全部入ったぞ、陽太」 「うん…」 陽太の手が下腹を触り、笑った嬉しそうに。 「ここにある…」 ペニスがドクンと大きくなった。 「あぁん、おっきい…」 もう、夢中で腰を進めては退けて。 陽太のいいところを小突いて。 絶え間なく陽太の口から出る嬌声。 「い…、あ、あ、あぁ…」 止まらない。 ああ、優しくしたいのに。 陽太が二度目の射精をして。 その後、陽太が気を失うまで攻め立てて、奏多も薄い膜越しに熱を放った。 朝から気を失わせる程するつもりも無かったのに。 陽太が可愛すぎて可愛すぎて、本当に困る。 この愛しい子を泣かせないために、奏多に出来ることは一つしかない。 少し口を開け眠る陽太の頬をスルリと撫で、奏多はベッドを抜け出した。 表情は先程の甘さが微塵もない冷酷な極道の顔だった。

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