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お題『指切り』(稜而×遥)

「あーん、痛いのーん! やっちまったんだわー!」 遥は包丁を片付け、左の人差し指の指紋に沿って赤い液体が滲むのを、流水で洗い流す。 「そう言えば、このおウチに来てから初めての怪我なのよ。絆創膏がどこにあるのか知らないのん。……お呼び出し致しまーす、整形外科の渡辺稜而先生、渡辺稜而先生、絆創膏はどこですかーなのーん!」 怪獣の足型スリッパをぽよぽよさせて、遥は稜而の書斎を訪ねた。 「どうしたの?」 稜而はすぐに顔を上げて、遥に向けて両手を差し出し、歩み寄ってきた遥の腰を抱いて、自分の膝の上に座らせる。 「ジャガイモを切ってたらグラついて、ついうっかり人差し指を切っちゃったのん」 稜而は目を丸くして、遥の手首を掴んだ。 「それは大変だ。見せて」 「大したことはないと思うのん。ただ、コロッケを作り続けるために、絆創膏を貼って、手袋をしたいのん」 「ダメだよ、そんなの。圧迫止血して、心臓より高い位置に挙上しておかなきゃ。……傷口は洗浄した?」 デスクの引き出しから取り出した絆創膏を遥の人差し指に巻きつけると、自分の肩にその手を乗せた。 「遥、このまま挙上してなきゃダメだよ」 稜而は遥の目をしっかりと見て言い聞かせる。 「はいなのん。でもでも、こんなことをしていたら、稜而の好きなコロッケが作れないのん」 「コロッケも好きだけど、遥のことも大好きだから、遥を食べるよ」 ドレンチェリーのように真っ赤な唇へキスをして、稜而は目を弓形に細めた。 「暴れないで。右手でしっかり左手を押さえておくんだよ」 両手を上に挙げて無防備になった遥のシャツは捲りあげられ、稜而の唇が優しく押し付けられていった。

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