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お題『お風呂上がり』(稜而×遥)
稜而も遥も家電を見るのは嫌いじゃない。
デートの途中で家電量販店に吸い込まれて、買う予定もないのにハイスペックなノートパソコンを見比べたり、ずらりと並ぶテレビを見渡したり、冷蔵庫や洗濯機のふたを開けてのぞき込んだり、掃除機の吸引力を試してみたりする。
エスカレーターに乗っている間も遥は左右の壁を見回して貼り紙を読んで情報を集めている。
「理美容は一階か」
と呟く稜而の隣で遥は嬉しそうに声を上げた。
「一階はお菓子も売ってるのーん! じゃがりこ七八円は安いと思うんだわーっ!」
稜而は遥が飛び出して行かないように手を掴んでから、エスカレーターを下りた。
「ねぇ稜而、お菓子はあっちなのん」
「はいはい、ドライヤーを買ったらな」
棚一杯に並ぶお菓子を振り返り、振り返り歩く遥を引っ張ってヘアドライヤー売り場で候補の商品を見比べる。
「風量は多い方がいいけど、温度調節機能も大事。マイナスイオンもほしい。重さは気にしないから、温度センサー付きにするか、より風量が多い方にするか」
見比べている稜而に店員が近づいてきて、全く候補に入れていなかった商品を示す。
「こちらは風量を無段階で調整できます。マイナスイオンも表面のコーティングではなく内部まで浸透するタイプです」
稜而は即決して、遥は「わーい!」と声を上げてお菓子売り場へすっ飛んでいった。
「はい、遥。座って」
稜而に促されて、遥は籐を編んだ丸椅子に座る。鏡の中にはバスローブ姿の遥がいて、その後ろにはドライヤーを持つ稜而の姿があった。
「♪ぬれたかみーを、はじめてみせーたよるー。はるかわらったー、だかれていたーからー、うれしくてー♪」
「嬉しかった?」
「もちろんなのん。だってずっと稜而と一緒にしたかったんだもの。毎晩ちょっとずつ練習して、稜而はどんなふうにするのかなって思ってたのん」
稜而は慣れた手つきで遥の髪をブロック分けしてドライヤーの風を当てていく。
「ふうん。俺も楽しみだったよ。今でもチャンスがありそうな夜は楽しみだけど」
手櫛で髪を梳くたびに、遥は嬉しそうに目を細める。
「遥ちゃんも楽しみよ。今日はできるかなーって考えちゃうのん。どうやってお誘いしようかしらって作戦を練るのも楽しみなんだわ」
地肌までしっかり乾かし、両手で荒く髪を梳いて、遥がふるふるっと頭を振ると、ご自慢の巻き髪がくるんと復活した。
「ありがとうなのん」
「どういたしまして。お礼のキスして」
「もちろんなのん!」
差し出された頬にドレンチェリー色の唇が触れると、稜而は笑顔になり、遥の肩を掴んで頬にキスのお返しをする。そのまま唇を奪い、舌を差し込んで、遥の目元を赤くさせてからニッコリ笑った。
「ここでする? ベッドへ行く?」
「あーん、鏡の前も素敵だけど、今夜はベッドの上でバスローブを脱がせてほしいのん。えっちっちーな下着をご披露なんだわー」
「よし、そうしよう」
稜而は遥を横抱きして寝室に向かって歩いて行った。
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