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お題『雨やどり』(稜而×遥)
携帯のバックライトを消し、シャープペンシルから手を離す。
そのとき、窓の外に一瞬閃光が走り、たちまち空を割るような音が聞こえた。遥が窓の外を見たときには、ビー玉のような雨粒がアスファルト一面を跳ね回っていた。
「うふふ。チャンスなのーん!」
遥はそのまま、飛び跳ねるように家を出る。直後に着ているカットソーは肌を透かし、ジーンズの色は変化した。
「♪あーめあめふれふれ、もっとふれー、はるかのいいひと、つれてこい♪」
構わずスキップして歩き、病院から自宅へつながる道の曲がり角で膝を抱える。
「凄い雨だな!」
白く煙って視界がきかない中を、独り言と共に雨を蹴るように走ってきた人物は、そのまま革のライダースジャケットで頭を覆って目の前を通り過ぎていく。遥はその姿を目で追ってから、駆け出した。
「あーん、キャベツぅ! 遥ちゃんも入れてーっ!」
稜而は振り返って目を丸くする。
「お前、どうしたんだ?」
「雨やどりしたくて、待ってたーん!」
「は?」
ぐいぐいと身体を押し付けて、ライダースジャケットの屋根の下へ潜りこむ。
「帰ったら、一緒に熱いシャワーを浴びましょなのん」
若草色の目を細め、ドレンチェリーのように赤い唇を左右に引き上げ、稜而の唇にキスをした。
「雨やどり作戦、だーいせーいこーう!」
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