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お題『あーん』(舟而×白帆)

 風邪を引いた舟而は、布団の上に上体を起こし、綿入れ半纏を肩に羽織って芋粥を食べていたが、手拭いで口を覆うと背中を丸めて激しく咳き込んだ。 「先生、お薬をお持ちしました」 茶色の瓶を盆に載せて持って来た白帆は、舟而の咳き込む姿に駆け寄り、盆を畳の上へ置くと、振動する背中をさすった。 「ああ、ありがとう。もう大丈夫」  片手を挙げると、白帆は背中から手を離し、茶色の瓶を舟而に見せた。 「シラップです。お医者様に特別にお願いして、甘ぁーく調合していただきました」 胸を張って笑う白帆の顔を見て、舟而は小さく咳をした。 「あの、実は僕は甘い物は苦……、にが……。いや。その、薬は苦いなら苦いままのほうが、何というか、効果があるように思うんだ……」 尻すぼみに声が弱り、視線を泳がせるが、白帆は口を丸く開けて笑った。 「お医者様が調合されたお薬です、ご心配には及びません。それに甘いほうが飲みやすいじゃござんせんか。先生も甘い物はお好きでしょ?」  舟而は咳払いをして、落ち着かなく庭を見た。 「あら、先生ったら。……ひょっとして、ご褒美のおねだりですか?」 白帆の話し方がゆっくりになり、声に艶が乗った。 「褒美?」 「飲んでくだすったら、私がご褒美を差し上げます。ふふふ」  舟而はすぐさま口を開けた。 「さあ、よく効くお薬でございます。こぼさず召し上がれ。はい、あーん……」  匙の上にシラップを垂らし、ゆっくり舟而の口へ流し込む。 「美味しゅうございましょう? ねえ?」  舟而は口へ流し込まれるまま、子どものように顎を上げてシラップを飲み、最後の一滴まで飲み終えると、そのまま白帆の胸へ倒れ込んだ。 「ふふふ。お熱がありますから、無理は禁物でございます。ぜーんぶ私がお世話して差し上げますから、ね……」 白帆は腕の中にいる舟而のかわいた唇へ接吻をした。

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