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お題『看病』(稜而×遥)

 アラームをセットせずに眠れる日曜日の朝。  稜而は自分の顔を覗き込む気配で目を開けた。 「おはようございますなのん。お加減はいかがですかー?」  天井を背景に、遥の顔が視界いっぱいに広がっていた。 「お、おはよう……」 「お熱はありませんか?」 額をくっつけて体温を測ると、遥はすぐに両手を広げて自分の口を覆った。 「あーん、大変なのん! いっぱいお熱がありますですのん!」 「…………は?」 広いベッドの隣のスペースにぺたんと座る遥は、白衣を着ていた。左袖に筆記体で『Tetsumon』と刺繍が入っていて、稜而が大学時代に使っていたものだとわかる。 「お胸の音も聞きましょうねっ」  稜而のパジャマのボタンを外すと、稜而が書斎に置いていた聴診器を耳に装着し、全く見当はずれな場所にチェストピースをあてて、ふむふむと分かったような顔をしている。 「遥先生、音はどうですか?」 稜而が込み上げてくる笑いをこらえて訊くと、遥はとても深刻な顔をした。 「とってもたくさん心臓がドキドキしてますのん。これは重症です」 「なるほど。遥先生のお見立ては? 病名とか、完治するまでの見込みとか」 「コホン、コホン。これは世界でたった一人しか罹らない、『遥ちゃん大好き病』です。とても幸せなことに、一生治りません」 「そうですか。それはよかった。こんな幸せな病気なら、一生罹っていることにします」 稜而が両腕を遥に向けて広げると、遥は笑顔で胸へ飛び込んできた。 「あーん! 稜而の病気が一生治らないように、遥ちゃんがずっとずっと看病してあげるのーん!」

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