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お題『朝食』(稜而×遥)

 アラームが鳴るより早く目が覚めた。  稜而はすぐにベッドから出て、シャワーを浴び、ひげをあたって、ポロシャツとチノパンを身に着け、鏡の中の自分を角度を変えながらよくよく観察し、ヘアワックスをもみ込んで、家を出る。  小学校からはラジオ体操の音楽が聞こえ、どこかの木では蝉が鳴き声を上げていた。  坂を下り、救急車出入口の近くにある職員通用口を通って病院へ入る。そのまま院内のコンビニへ直行し、おにぎりを三つと缶コーヒー、そしてチロルチョコを一つ買うと、整形外科病棟まで三段飛ばしで非常階段を駆け上がった。  トン、トトトンとノックしてドアを開けると、ちょうど遥がマーガリンとイチゴジャムを塗った食パンに噛みついているところだった。 「キャベツおはよー!」 「俺はキャベツじゃない」  言いながらベッドサイドの椅子に勝手に座り、脚を組んで、コンビニ袋からまずチロルチョコを取り出した。 「わーい、チロルチョコ!」 「デザートは食後にしろ」  そんな言葉を聞くはずもなく、遥は食パンから手を離して、チロルチョコの包装を剥くと、前歯で半分かじりとって、断面を眺めながらかみ砕く。 「おーいえー! 基本のコーヒーヌガー、超美味しーい!」 「昨日も言ったけど、俺は今週は病棟勤務じゃないからな。代わりの先生に頼んであるから、きちんとおっしゃることを聞いて、いい子にしてろよ」 「オレ、いい子にするの得意ー!」 「嘘つけ」 ぱちんと指先で遥の額を叩くと、おにぎりを食べ終えた稜而は立ち上がった。 「昼は用事があるから、夜にまた様子を見に来る。お大事に」  そう言って病室を出て、稜而は自宅へ引き返す。  自宅の前には大きなトラックが停まっていた。 「家具屋さん、来てますよ」 家政婦のむにさんに教えられて、二階までまた階段を三段飛ばしに上がる。 「子ども部屋と寝室、二つのベッドを処分してもらって、新しいベッドをこちらの部屋へお願いします」 ベッドのフレームが大きくしっかりしていて手間取ったが、昼過ぎには設置が済んで、稜而はまだマットレスしかないベッドの上にあおむけに倒れた。 「こんなことまでして、ホームステイの話を断られたら。……ま、何度でも誘って、食い下がればいいか。父さんにも遥の状況を話して、奨学金とホームステイの話をしてくれるように、頼んでおかないとな……」 「この家、ベッドがひとつしかないんだ」 遥が壊れたスーツケースを持って来た日、稜而の説明に、遥は笑顔でベッドの上へ飛び乗った。以来、いつでも稜而の左側には遥が寝ている。 「朝メシ、食おうかな」 稜而はまだ眠っている遥のパジャマを捲り上げて、その白い肌にキスをした。
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