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07-03
半眠りの中ですぐ近くにある体温は夢のような、夢じゃないような。頬を触れる手は包み込むように優しかった。
抱き寄せられるのは嫌じゃなくて、むしろ気持ちよくて、されるがままになった。大きな男の手は背中から脇腹を何度も撫でる。
「んっ…ふっ…」
思わず漏れた吐息を唇で塞がれた。慣れた調子でどんどん合わせた角度を深められていく。腰を抱かれたまま、片方の手で耳から首筋、喉元を柔らかく撫でられると堪らず声が出た。
「あっ…、ん…っ…」
これはさすがに夢じゃない。相手は一人しかいない。夢心地の中でも、本当にこいつは…いい加減にしとけよと目を閉じたまま体を遠ざけるが、欲望を持った舌に唇の間を攻略され唾液を混ぜかえされる。そうして欲しくてそっと唇に隙間を開けた自分を恥じた。
嫌がってみても、アルコールに頭が浸されているせいか、気持ちよくて本気で拒めない。
とろけるような巧みなキスに抗えず、舌を絡めて応えると、体は正直に熱を持った。
横向きで抱かれたまま太腿の間に膝が差し込まれ、男の背に指を這わせながら腰を擦り付ける。上になった片膝を下から腕ですくい上げられると密着度が増して、そこから溶けていく気がした。
自分から足も体も絡ませ、男の逞しくてしなやかな体をもっと知ろうとする。
「んっ…はぁ…もっと…」
擦り寄せた服越しには、互いの兆しを感じていた。
…というところで麻生の意識は途切れている。
朝、目が覚めると手塚は横にいなかった。一気に記憶が蘇って、いらないほど溢れてくる。あまりの羞恥に耐えきれず、叫びそうになった。しかも途中から記憶がないとか最低だ。
やらかした!三十路手前にこんな学生のようなことをしてしまうとは思いもしなかった。
夢であってほしいとどうしようもない願いをかけるがそんなわけはなく、やたら生々しく触れ合った感覚は消えていない。寝た時と同じ服を着ていることだけが救いだ。
それに飲んだのはビールふた缶。急ピッチで飲んだとはいえ、それで記憶が飛ぶことはないだろう。きっと寝落ちしたに違いない。それも大抵ひどいけど、相手が相手なだけに、この場合かなりマシな展開だ。
さっとシャワーを浴びて、テーブルの上のメモ用紙を丸めてゴミ箱に捨てる。まだ冷たい空気の中を家からまっすぐ浜辺に向かって歩いた。手塚は間違いなくそこにいるような気がした。顔をあわせるのをじりじりした気持ちで待つことなんて、今はできない。
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