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先に目が覚めた手塚は、すぐ横に眠る麻生の頬を撫で、ぎりぎり唇の端に口づけた。音を立てないよう部屋を出て荷物をまとめた後、シャワーを浴びる。
「麻生さん、俺、先に行くね。荷物はまた後で取りに来るから」
起きないだろうと思いながらも襖を少しだけ開けて小さく声をかけると、麻生が微睡みの中で目を擦りながら体を起こす。
「お前は大丈夫だと思うけど、なんかあったら絶対俺を頼れよ。お前のためなら、なんでもしたいんだ…」
現実に、こんな恥ずかしいことを真顔で言う人間に初めて会った。それが麻生だ。さらっとした塩顔のくせして。
「なんかそれ、ものすごい熱烈な愛の告白になってるよ。『俺が役を演るためなら、なんでも手伝ってやる』でしょう」
寝ぼけているのか、ん?と首を傾げながら何か考えている、その無防備な表情を可愛いと思ってしまうのだから、やっぱりもう気持ちは手に負えなくて、一気に頭が悪くなってしまった気がする。
「じゃー、今までやったこと撮影で出し切れるように、麻生さんからちゅーして」
「はっ?!お前、よくそんな恥ずかしいこと言えるな!」
手塚の言葉に一気に目が覚めたらしい麻生は、妙に高い声で言った。この辺の感覚は一生交わることはないだろうと諦める。でも、その違いを知っていくのがきっと楽しい。
いきなり立ち上がって近づいてくるから、どこの処女だっていう程、期待にとくとくと胸が鳴った。ぎゅっと手を背中に回され抱きしめられる。
「大丈夫だよ、お前は」
「俺はキツネリスか。もうそれいらない」
腕をほどきながら訳がわからないという顔をする麻生に、有名なアニメで小動物に大丈夫だと言うのだと説明する。
突然ぎゅっと肩を掴まれ、甘やかに唇が満たされた。名残惜しさを残して麻生の顔が離れていく。
「行ってこい。俺はお前を見てる」
まっすぐ手塚を見つめてくる瞳に、笑顔で応えて家を出た。
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