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12-01 クランクアップ / side 麻生聖
『佳純くんですか?佳純くんはすごく優しくてリアル王子様みたいだよね』
ビデオカメラの向こうで槻山嶺奈が口元に手を遣り、隣の共演女優に話しかけるように言う。
『待ち時間一緒になって、タープテントの下にいるときなんか『嶺奈ちゃん日差し当たってるよ、日焼けしちゃうからもっとこっちおいでよ』とか言ってくれるんです。こう、ちょっとしたことに気づいてさりげなく、さりげなくですよ、声かけてくれるんです。ねー』
最後はもう一度隣に向かって同意を求め、そっと笑う。
『ねー。ちょっと喉の調子が悪いなと思ったら、のど飴さっとくれたりとかね』
『あ、それ、いろいろくれるよね?疲れてる時『お菓子食べる?』とか。あれ?餌付けされてるのかな、私たち?』
『それだけじゃないない。いつもこう、にこって優しく笑いかけてくれるよね。いろんな意味でみんなの癒しの王子です』
女子ふたりがにっこりキメ顔を作ったところで麻生はストップボタンを押した。
なぜか秀野からハンディカムを渡され、空いた時間にメイキングビデオ用の映像を撮らされている。オフショットはじめ、こうして簡単なインタビューまで撮っているので、後で別料金を請求してやろうと思っている。
ーー そうそう、手塚は細やかによく気がつくんだよ。
それで人を嫌な気にさせることは絶対なく、さりげなく人を気遣ったり、自分でさっと動いたりする。それにすごく人当たりがいい。
空港での出会いが夢のように遠く思えるほど、柔らかな表情を見せるようになった。現場全体が疲れてきた時にはムードメーカーになって空気を和らげる。
女子からすれば王子様みたいというのも頷ける。
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