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12-02
次は休憩中に手塚を除く男三人を集めた。
『佳純、台詞絶対間違えないよね。もう、人の台詞まで完璧に全部覚えてるの』
幼馴染役の男が言うのに『お前が間違えすぎなんだよ』と東京でイベントプランナーをしていて地元に戻ってきた役の男がツッコミを入れる。
撮影は順調に進み、祭り当日直前まできているので、六人の海の家メンバーは実際にかなり仲良くなっている。
見ていて微笑ましくなってくるほど、高校生の部活のノリではあるが仲間意識ができていて、賑やかかつ前向きなそのまま映画の雰囲気になっている。演技に関してもみんなで話し合ったり、フォローを入れたりとそれぞれにいい刺激になっているようだ。
『方言がめちゃくちゃうまいよね。地元スタッフさんとかにも積極的に話しかけてって『今のもう一回言ってください』って頼んだりね。根が真面目、多分』
『多分かよ!』
料理人役の人の良さそうな男が言ったことにプランナー役がもう一度ツッコミを入れる。
『地元の美味しいものよく知ってる。『魚はやっぱり天然物だよね』とか言うんだよ。旬の魚とか詳しいし。あの顔で』
地元の魚をしっかり頭に叩き込んだらしい料理人役は感心したように言う。
『何?あの顔でって』
『魚の名前なんかいっこも出てきそうにないじゃん』
ーー 俺が教えたんだ。覚えなくていいって言ったのに。あいつ勝手に覚えたんだ。
『近所にね、魚介類の直売センターがあって、お寿司とか売ってるんですよ。時々買い出しに行ったりするんですけど、佳純と行くと売店のおっちゃんが絶対おまけくれるの!』
『それな!あいつは人たらしだね。あの笑顔にコロッと騙されちゃうんだよ』
『いや、騙されてるわけではない。ほんとにいいやつですからね。こう俺が俺がって感じじゃなくて影のまとめ役。みたいな。愛され男子だね』
ーー あいつ、可愛いからなー。スタッフさんたちの間でも評判いいし…
『あと、めっちゃスタイルいいよな?』
一番ちゃらく見えるプランナー役が言ったので、思わず麻生は頷いてしまった。
『え?惚れちゃった?』
『違うって。やっぱね、あいつダンスしてるから引き締まったすらっとした体してるんですよ。普通に立ってても無理にじゃなくて背中がすっと伸びてるもん』
ーー 脱ぐともっと綺麗だけどな。
思わず想像して気がそれてしまって、賑やかに言い合ってまとまらないままビデオを適当に終了させた。
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