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12-07

 焼きたてのパンをテーブルに放り出して、体を絡めあって唇をつけた。それだけで体の芯がじんじんした。  テーブルに乗り上げるようにして体を押され、密着する手塚の体を感じながら唾液が口の端から溢れるほど舌を絡ませあった。それでも足りなくて、粘膜の奥まで求めて手塚のものを啜った。 「麻生さん、俺…、どうしよ…。まだ撮影終わってないよ…」  乱れた息遣いの中で、手塚の声は切なく響く。 「ラストなんて今のお前そのままだよ。後はもう…、終わりを惜しんで演るだけだろ。お前が抱きたいなら…今でも…」 「やっぱずるい…、麻生さんは。こんな抱かれる気満々で俺のこと煽っといて」 「確かに、今クランクアップまでおあずけとか言われたらキレるな」  あぁもーっ、と諦めたのか、拗ねたのかのような声を漏らして、もう一度唾液に濡れた唇がつけられる。そのままテーブルに押し倒されて肘をついて体を支えた。口内を貪られながら、片足を熱を隠さない男の腰に絡める。  後ろに倒れるほど絡めた足に力が入り、腰が押し付けられた。その間にある互いのものも切迫した欲望を訴えていた。  するりと手塚の手が平らな胸を擦って、掴みようもないのに、ぐっと掴む。離さないで欲しいと、その手の下にある心が切望していた。 「麻生さんの胸…すごいドキドキいってるよ…」 「お前もだろ…。ここ体勢苦しい。部屋まで連れてって」 「さすが麻生さん、俺使うのうまいなー」  逞しい肩に縋り付いて抱き上げられるのは気持ちいい。こうして愛しい人に体を預けるのは堪らなく気持ちいい。 「荷物届いてるって言ってたでしょ、どこ?」  朝早かったから敷きっぱなしになっていた布団のシーツの上に横たえられ、全身の力が抜けた。さっきまで触れられていたところが、相手の熱を失っても勝手に火照っていく。手塚を記憶した体が、どくどくと血を巡らせる。 「そこの棚」  顔の向きだけで教えると、手塚が手を伸ばして小さな包みを取り、べりべりと雑に開ける。数日前にいきなり届いたので連絡してあった。中から出てきたのはローションのボトルと小さな箱。 「お前、めちゃくちゃ用意いいな…」 「次は絶対挿れるって言ったでしょ。当然だよ」 「挿れる、とかあからさまな言い方するなよ…」  麻生の言葉を無視して目の前で手塚は薄手の長袖シャツをひらりと脱ぎ、バランスのいい体を晒す。健康的なはずの上半身裸の姿に、妙に色気を感じて見つめた。 「麻生さん、やーらしー目で俺のこと見てる」 「なんだよ、悪いか。色気振りまくお前が悪い」 「そんな振りまいてる?俺。好きな人に欲情してるからかな…」  さらに色気を滲ませた目に笑みを浮かべて体をすり寄せられると、胸が高鳴った。Tシャツを裾から捲り上げられ、すでに期待に立ち上がった胸の先を熱い口内に含まれる。それだけで吐息を漏らしながら身悶えてしまう。

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