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試写会の後はいつものように手塚のマンションに向かった。軽く食べてシャワーを浴びればもう何も手につかなくて、とりあえずソファーで小説の本を開き文字を追う。全く頭に入ってこない文章にうんざりしてきた頃、扉に近づく抑えた足音に気づいた麻生は、待ちきれずそちらに向かった。
内側から鍵を開けて扉を押す。驚きに目を見開いた手塚を誘拐犯のようにその腕を掴んで中に引き入れた。抱きしめるつもりが、バランスを崩してもつれ込むように玄関スペースに倒れる。
「いっ…たっ…ぁ!!」
「何してんの、聖さん?」
アイドル手塚ではなく、その辺のおしゃれ地区でそこそこ目立ちそうな程度のおしゃれ手塚が、麻生を押し倒す形でものすごく普通に上から覗き込んでいた。
「わっかんない……。なんか早くお前に会いたくて『あ、帰ってきた』って思ったから…扉開けて…」
「で、こんなことになってんの?『おかえり佳純、ちゅ』とかすればいいのに。背中痛いでしょ?大丈夫?」
帰ってきて靴を履いたままいきなり部屋の入り口に転がっているのに、手塚は全く気にする様子なく、人の体に乗り上げあっさりと言う。
「痛いよ!痛いってわかってるんなら早くどけ。お前、重たいから!」
「えー、これは『ドアを閉じた瞬間襲われたいの』のお誘いじゃないのー?」
全体重の八十パーセント以上が麻生にかけられたまま、べろりと乱暴に唇を舐められた。好きな男にぬるい粘液を擦り付けられたことにぞくぞくして思わず顔を逸らすと、今度はむき出しになった首筋を動物じみた舌遣いで舐め上げられる。
「…んっ…ぁ……やめっ…あっ…」
そのまま脈があるところを柔らかい唇で吸われ、抵抗しながら思わず上ずった声が漏れる。唇が当てられたところはすでに甘く痺れている。
「ほんと、違うから…まっ…て…」
「なぁに?聖さん。俺、こんな情熱的な誘い方されるの初めてで嬉しい」
いつものように茶化して言いながら優しい手つきで髪を梳かれると、それだけで気持ちがふわふわしてしまう。でも手塚に体勢を変える気はないらしく、麻生は玄関先のフローリングに背中を押し付けられ組み敷かれている。
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