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大切な 第6話
こんな所でいつまでも寝てても仕方ないからなんとかして奏悟を僕の上から横にズラすしかないよな?
僕も少し酔いが回っていて退かすにも上手く力が入らない。
もうこのまま玄関で寝てしまおうかな?
真夏や真冬ならなんとしても奏悟を僕の上から退けようと思うが熱くもなければ寒くもない気温だけに諦めも早い。
上から退かすのも諦めて奏悟の顔をもう一度見た時に少し目が開いた。
「ゆ・・・う。」
「奏悟?起きたのならリビングに行こう。」
「好きだ。ゆう。」
ゆう・・誰だ?
それに好きだって言ったよな?
「奏悟、僕はゆうじゃないぞ寝ぼけんなよ。」
「ゆう。」
「・・・・・!!」
ちょっと待て、待って!!
今僕は何をされているんだ?
右頬に手を添えられて奏悟の右手は僕の左手を恋人繋ぎのように指を絡めてしっかりと握りしめている。
僕は空いている手で奏悟を押すがそれも虚しい抵抗に過ぎない。
マジで!
星宮智明26歳は生きてきた人生の中で恋人も好きな相手も出来た事がなくてつまりキスもまだで言わずと分かると思うが童貞。
初めてのキスが親友で男。
もうパニックというより何も考えられなくて放心状態に近い。
ただ抵抗だけはしないとと身体が動いているに過ぎない。
奏悟の舌が唇を割って入り僕の舌を絡め取ると初めは荒々しく噛み付くような感じで暫くするとねっとりと卑猥な感じになり背中がゾクッとした。
気持ち悪さとか感じなかったが悲しさは増してくる。
本当に何が悲しくてファーストキスを玄関で男の親友に奪われなきゃいけないんだ。
僕のファーストキス・・・。
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