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大切な 第8話
身体が痛い・・・。
目を開けると天井は寝室のものとは違う事に気づいた。
僕、玄関の床で寝ていたんだ。
動けなくて目を瞑って色々と考えていたら親友のというか人の体温が暖かくて心地よくなりなんだか考えるのが馬鹿らしくなったんだった。
そしたら急に眠気に襲われてそのまま寝てしまったんだな僕。
「ここ何処?」
右隣から聞き覚えのある男の声が聞こえてくる。
そして昨晩の出来事が鮮明に蘇り僕は慌てて上半身を起こした。
「イッ・・。」
「おうっ、おはよう。智明。どうして俺は2人でお前ん家の玄関で寝てんだ?」
床に胡座をかいてまだ薄くしか開かない目をこちらに向けて昨夜の出来事がまるで無かったかの様な態度の親友。
こいつは何を言ってるんだ?
あんな事をしておいて惚けてなかった事にしようとしているのか?
それとも本当に覚えていないのか?
「お前、覚えてないの・・・・。」
「俺が何?」
「だから、お前がだな・・・。」
「だから、俺がなんだよ智明。」
言えるのか言わないとずっと僕だけがあの出来事を悩み続けないといけなくなる。
僕が奏悟の立場なら後から悩んでいたとか聞かされるよりは良いよな?
奏悟と僕は考え方が似ている様なところがあるからきっと奏悟もそう思うはずだ。
口ごもりかけた言葉を僕は勇気を出して奏悟に小さな聞き取りにくい声で言ったのだ。
それが良かったのか悪かったのかはこの時の僕には分からなかったが良かったと思って話したんだ。
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