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大切な 第10話
モヤモヤとしながら僕がコーヒーを淹れているとリビングのドアが開き奏悟がゆっくりと僕の方へ近づいてくる。
「智明、大丈夫か?」
「何が?何を大丈夫って聞いてんの?」
僕はコーヒーカップにコーヒーを注ぎながら意地悪く聞き返してしまった。
奏悟は下を向いてまた黙ってしまった。
こんな言い方をしたくなかったが奏悟を見ると思い出してしまう僕の黒い部分が出て来てしまう。
僕だって本当はまだ心の整理がついていないんだよ。
無理に感情を押し殺そうとしているだけなんだ。
他の奴らからしたら同性同士のキスなんて事故にあったとか思えば良いとか男のくせに気にし過ぎだとか言われるかもしれない。
でも、あれは・・・。
酒の席の罰ゲームみたいなのや不意に唇が触れたとかじゃないんだよ。
僕の初めてのキスだったんだ・・・・・。
それに奏悟は好きな・・・好きな相手を思いながら切なそうにキスをしたんだ。
そんな奏悟の顔が頭から離れない。
思い出すと胸がチクリと針で刺されたみたいになるんだ。
なんだよこれ!
僕はおかしいのか?
こんな気持ちになるなんて初めてで戸惑いながらなるべく奏悟には気付かれないよういつもの様に振る舞うんだ。
そうしないと僕だけが親友と思えなくなるかもしれないとそんな気がしたからだ。
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