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第1話-2
家の鍵を開けてドアを押さえてやると、彼はおずおずと部屋を見回して、靴を脱いだ。
「ねえ、ほんとにいいの?別にその辺の……」
ホテルにでも連れていけというのか。それでも別にかまわなかったが、いや、むしろそうするべきだったが、ササキはどうしてか、彼を家に連れて帰りたくなったのだ。部屋の中に盗られて困るようなものは何もない。鞄の中の財布ぐらいか。
「いいからとりあえず風呂に入れ」
よれよれになった服と、ぼさぼさの頭。薄汚れた顔。なんだか雨の日に拾ってきた猫のようだ。
「え!?風呂入っていいの?やった!」
なぜか非常に喜んで、小躍りしそうだった。バスタオルと、帰る途中のコンビニで買ってきた下着を渡す。
「服は洗濯するから、その辺に置いておいてくれ」
背中を押して脱衣所の方へ促すと、彼は満面の笑みをこちらに向けた。汚れた体のまま飛びついてきそうなので、ぐいと背中を押しやると、代わりの服を取りに行った。
ずいぶんと嬉しそうにするものだ。浮かべた笑顔を思い出して頬が緩む。悪くない拾い物だ。
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