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第6話

「ねー俺、毎日すっごく暇なんだけど」  何故か律義にササキの言うことを聞いて、ハルはずっと家にいた。一歩も外に出ないで。仕事に行っている間にどこかへ出かけているのかもしれないが、そんな様子もない。信じすぎているのはわかっているが、ハルが素直で馬鹿なことを考えると、金もないのに、鍵を開けたままどこかへいっているとは思えなかった。 「あんたの部屋何もないじゃん。ゲームとかどこにあるの?隠してるの?」 「ゲームはしない。本があるだろ」  そう言うと、ハルはむうっとふくれた。  絶対天然だ。かわいい。 「俺あんまり難しい漢字読めないんだよ」 「……お前本当に馬鹿なんだな」  さらにふくれっ面をしてそっぽを向く。 「俺はゲームはするけど本は読まないの」  そういえばこいつ携帯も持っていなかったな。前に一度聞いたが、使用料金が払えないから売ってしまったと言っていた。確かに暇かもしれない。ササキの部屋にはテレビと本しかない。 「じゃあゲーム買ってやるよ」 「え!?ほんとに!?やったー!」  ネットで注文しろと、タブレットを渡す。現金をくれと言われるかと思ったが、考えが及ばないようだ。ウキウキしながら「何にするかなー」と嬉しそうに選んでいる。  こいつよく今まで生きてこられたな。  誰か金持ちの人間に囲われていた過去を勝手に想像して、頭に血が上った。  いやいやいや。これは想像だ。本当の過去は知らない。落ち着け。  しかしそれを聞く勇気もなかった。  誰かがハルに触れていたなんて、考えたくもない。たとえそれが、女だとしても。 「ねー決めたよ。決済してよー」  注文画面を見ると、よくわからないものがいっぱい並んでいた。  結構ずうずうしいな。  ハルは嬉しいのか、床をごろごろと転げまわっている。本当に成人しているのかと、少し不安になった。

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