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第4話-3
指を抜いて体を起こす。ハルは「え……」と呟くと、物足りない顔をしてササキを見た。
「なに?」
「や……別に……」
じっと自分の股間を見て、手を伸ばそうとした。その手を遮る。我慢できないのか、身をよじって抵抗する。
「触りたい」
「駄目だ」
「何で」
少し涙目になる。もう一度指を入れると、少し嬉しそうな顔をした。ような気がした。たぶん気のせいだ。
ぐりぐりと指を押し付け続けていると、押し殺していた声がだんだんと大きくなる。もうなりふり構っていられないのか、何度も股間に手を伸ばそうとする。その度に手を遮ると、じれったそうに呻く。
「ああ……もう……ダメだって。イキたい。イキたい!」
本当になりふり構っていられなくなったようだ。
さすがに初めてで、後ろだけでは無理か。刺激するのを止めずに股間のものを口に含む。ハルは大きく声をあげた。歓喜がにじみ出ている。ササキの頭を手で押し付けて、腰をよじり、浮かせ、動かしている。
ハルの興奮にササキの股間も熱くなる。でも駄目だ。入れるときっとまだ痛いはずだ。
強引に自分だけが気持ちよくなれるように、大きく体をよじっているハルはかわいかった。
「ああ……!」
ひと際大きな声を出して、ため息のような長い息を吐いた。疲れたのかぐったりしている。
「気持ちよかっただろ」
「ん……」
ぼんやりと、陶然とした表情でササキを見た。手を伸ばしてササキの頭を抱き寄せると、唇をそっと押し付けてくる。驚いた。体が固まった。そして嫉妬した。誰と間違えているんだ。ササキはハルの唇に噛みついて、引っ張って、何度も口づける。
「ん……ちょっと……痛い!」
肩をぐいと押されて、顔を離した。
本当に本気で噛んでいたらしい。
「ああ、悪い」
頬をなでると、彼は目を細めた。しかし、我に返ったのか、ササキの股間を凝視して、恐る恐るこちらを見た。
「ねえ、それどうするの?まさかもう一回とか?俺イっちゃって辛いんだけど……」
「…………」
「沈黙怖い!」
「じゃあ舐めろ」
「えー」
なぜか気が大きくなっている。少し優しくされると簡単につけあがるのか。なんてかわいいんだ。
「金の代わりにセックスしてるんだ。自分だけイってどうするんだよ」
ササキの言葉にひくっと頬を引きつらせると、おずおずと触ろうと手を伸ばした。
「あ」
「え?」
「いい、触らないでくれ」
「えーなになに、どうしちゃったの?」
理解しているのかいないのか、にやけた顔でササキを見てくるので、額を指ではじいた。「痛い!」と額を押さえて、こちらを睨んでくる。
今触られると一瞬でイきそうだ。さすがに恥ずかしい。ハルは自分が優位に立ったと思ったのか、にやにやしながら、もう一度手をのばしてきた。その手を払う。
「いいって」
苛立ちを声ににじませると、びくりと手を引っ込めた。
青ざめている。ぞわりと何かが背筋を這い上った。ひっこめたハルの手を引っ張ると、唇に噛みつく。頭を抱き寄せて、深く口づける。何度も何度も。
どうしてこうも無防備なんだ。
外に出てまた物乞いのような真似を始めたら、きっとボロボロになって死んでしまう。
手放したくない。
死ぬのなら俺の前で死んでほしい。
俺が殺してもいい。
絶対に、誰にも、触れさせたくない。
強く体を抱きしめる。
折れてしまいそうな細い体。
かわいい。もうすべてが愛おしい。
ああ、好きだ。大好きだ。
俺は彼に狂ってしまった。
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