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第5話 あなただけのもの

 銀は、困り切っていた。  隣には、自分の恩人。人狼の王様……が泣きそうな顔で立っている。  なんでそんな顔をしているの……?  聞いても……いいのだろうか? 「……お前なあ…!そんな顔するくらいなら、男らしくビシッと言えばいいだろう?なんで…肝心な時に肝心な一言が出ないんだよ?お前が好きだ!結婚してくれ!まあ…二言だけどさ。ほら…さっさと言っちゃえよ!」  銀がなんて声を掛けようか躊躇っている内に、浅葱が先に声を掛けてしまった。  しかもその内容ときたら……吃驚してしまった。  今何て言ったのと銀が聞き返す前に、今度は物凄く低い声が聞こえて来た。 「……そんな簡単に言えるか!大体なあ…さっきからお前達だって何回も聞いているだろう?銀は、私の番になるつもりなんて……最初から無かったのだ。昨晩から四回も…私の伴侶にはならないと言ったのだぞ?四回も……番になるのは嫌だと言われた私の気持ちが…お前達に分かるのか!?」  王様は、もう……本当に泣き出す一歩手前の顔で浅葱に詰め寄った。  四回?  首を傾げる俺を、黒恵が見つめていた。  困っているというか、おかしいのを我慢している表情だ。 「…まあまあ…落ち着いて下さい王…!銀がとっても驚いた顔をしていますよ?なんだか…双方に誤解があるようです。取りあえず、お部屋に戻ってからお二人できちんとお話しをしてみてはどうでしょう?銀…あなたも、正直に自分の気持ちを王にお伝えしてくれますか?この方は…妙に我慢強いというか……いえ、違いますね。臆病者の、ヘタレなので…あなたに嫌われるんじゃないかと思ってなーんにも言えなかったそうですよ?」  くすくすと笑う黒恵の言葉に、銀は驚いて隣の王様を見上げた。  言われたい放題の王様は、今度は苦虫を噛み潰した顔になっていた。 「…王様…?あの…大丈夫…ですか?」  そっと問いかけると、王様は金色の瞳を瞬いて銀の顔を見た。  若干眉間に皺が寄っているが、さっきまでよりも落ち着いている様子にホッとした。 「…ああ…大丈夫だ。部屋に戻ろう……お前達…後で覚えていろよ…?」  銀の肩に回した手に力を込めて、王様は最後にとっても怖い声で二人にそう言ってから背を向けた。  背後からは、きゃーこわーい!!という燥いだ二人の声が聞こえてきたが……王様は無視した。  王様に連れられて、今朝目覚めた彼の部屋に戻ると銀は寝具に腰かけた。  隣に王様も座った。  この部屋には、この藁で作られた寝具以外に座る所がないのだ。  床は、岩盤。流石に冷たいそこに座る気にはなれなかった。  暫く二人で押し黙っていたが、王様が恐る恐る……銀の顔を覗き込んで怒っているかと聞いたので吃驚した。 「え…?っていうか…王様こそ怒っているんじゃ…ないの?俺……なんか知らない内に…随分と失礼な事を言っていたみたいで…ごめんなさい。あの…俺は別に王様の番になるのが嫌で、そう言っていたわけじゃないんです。俺は人間で…あなたは狼達の王様で……そんな偉い人の隣に居ていいわけないと思って…だって、王様はこんなに綺麗で優しくて…!俺はなんにも持ってない唯の人間で…それに…男だし。だから…王様に相応しくないと思ってて……王様が俺なんかを…その…伴侶に選んでくれる筈ないのに…誤解させたら…王様が恥ずかしいんじゃないかと思って…それで…それで……」 「…それで、あんなに必死になって…否定していたのか…?」  しどろもどろで弁解する銀を見て王様は驚きの声を上げた。  そうだったのか。  何度も頷くその姿は怒っていない。いや寧ろ嬉し気だった。  良かった。  嬉しかったので微笑む銀の手を王様の大きな掌がそっと掴んだ。 「私は五年前……お前と出会ったあの時から…ずっとお前が欲しかった。さっきの話を聞かれて顔から火が出るかと思う程恥ずかしかったが…全て真実だ。お前が泣いていれば、居ても立っても居られなくなった。お前が森に姿を見せない夜は、一人で寂しく泣いているのではないか…?そう思って胸が痛んだ。お前の傍に居たかった。お前に焦がれ続けて来た。 だが…お前は人だ。人には……人の幸せがある。昨晩、お前が私を選んでくれたとき…これで、お前を自分の傍に置いておける…そう思って喜ぶ私にお前は……私にくれた名前で呼ばないと言ったのだ。どれほど…私が落胆したか…お前には分からないだろう?だが……私が悪かった。ちゃんとお前に自分の気持ちを告げなかった…私の落ち度だ。だから、きちんと言う。銀……どうか私と番になって欲しい。お前が私の隣に居てくれるなら……この身に代えてもお前を守ると誓う!死ぬまで…お前の傍から離れない。銀……私をお前の半身にしてくれ…!」  真剣な黄金の瞳に射すくめられ……銀の身体は小さく震えた。  恐怖などではない。歓喜……心の奥底から沸き上がる喜びに打ち震えたのだ。  嬉しい!!  どうしよう……こんな奇蹟があってもいいのだろうか?  喜びに震え声もなく隣に座る男の顔を見つめていると、自分の手を握っている彼の手も同じように震えていることに気が付いた。   こんなに綺麗で皆に尊敬されている男の人が、怯えている。  誰よりも強くて……怖いものなどないように見える銀狼の王が恐れていた。  銀の答えを、必死な思いで求めているのだ……! 「…ありがとう…!こんな…俺を選んでくれて…とても嬉しい!でも…本当にいいの?俺が…名づけた名前……他の人狼のと全然違うんだけど…嫌じゃない?もし気に入らないなら、これから違うのを一生懸命考えるよ?」  彼からの求婚を受ける前に、どうしても確認したい事があった。  彼らの風習のことは、昨晩聞かされていたけれど……実際に会った他の人狼の名はごく普通の名前だった。  銀が王の為に用意した名は、外国の絵本に出て来る狼の名前だ。  しかも、昨晩彼に指摘されたように……雌狼の名前だから、嫌なんじゃないかと心配になったのだ。 「はははは…!気に入らないなどと…!そんなことはないと、昨晩言った事をもう忘れたのか?お前は、その名は大切な宝物の中で見つけたのだと私に言っただろう?それを聞いた時……本当に嬉しかった。誰よりも愛しい者が、私の為に大切な名をくれたのだ。どうか…その名で私を呼んでほしい。銀……返答を聞かせてくれ」  金色の瞳を煌めかせ、男は嬉し気に笑い声をあげた。  心の底から喜んでいると分かる、光り輝くような笑顔に銀は目を細めた。  こんなに眩しい……こんなに綺麗な人が俺の…… 「…ブランカ…!どうか…俺をあなたの番にして下さい。生涯…あなただけの為に…生きて行くと誓います。物語の王のように、物語の彼の妻のように……あなた無しでは、俺は生きていけない!永遠に…あなたの隣に居させて下さい」  見上げる美しい自分の伴侶の金色の瞳には、銀の顔が映っていた。  銀の青い瞳にも、彼の姿だけが映っている。  引き寄せ合うように、顔が近づき唇が重なった。  温かな唇。  摺り寄せ合い、押し付け合う唇から痺れるような甘い……快感が走り抜けた。 「……お前は…私の…いや、私だけのものだ銀…!そして、私もお前だけのものだ…!」  耳元で囁かれる宣言は、甘く響く低音で告げられた。  優しく押し倒されて、銀は目を瞬いた。   「…どうした…?」  くすくすと笑うブランカは上機嫌だ。  だが銀は……ちょっとだけ困惑してしまう。  だって……こんなに日が高い。  部屋は、採光の穴から這入り込む太陽の光でかなり明るかった。 「…あの…えー…あの…」  どうしよう。  なんかすごく恥ずかしいと顔を赤くする銀を見て、ブランカは吹き出した。   「…我々が夜活動する生き物だということを…忘れたか?だから…今は寝台で睦み合ってもいい時間なのだ。そんなに緊張されると……私もちょっと困る…なにしろ、私も番を得たばかり……初めてだから…加減が上手くできるか自信がない。協力してくれると嬉しいのだがな…?」  そっと唇を頬に押し当て、囁かれた言葉に一気にぶわっと顔に血が集まった。  真っ赤になった銀の顔を見て、ブランカは息を詰める。  堪らないなと苦笑を零して、赤く熟れた果実みたいな銀の頬を舐めた。  こんなに可愛いと、絶対に加減なんて出来そうにないと困ったように言われてしまった。 「…う…う……そんな…こと言われると…俺も困るってば…」  どうしたらいいのか分からないよ!ブランカの首に縋り付いて顔を摺り寄せれば、優しい掌がそっと髪を撫でた。  大丈夫……大切に大切にするから。  囁きながら、首筋に舌を這わせる男の声は掠れていた。    口づけはどんどん深くなり、息が苦しかった。  喘ぐような呼吸の合間に、銀の服に手が掛けられた。  あ……待って……  震える声で止めるが、男の手は止まらない。  シャツの釦を外し、露わになった銀の上半身に男の顔が迫る。   「あ……っ…」  鎖骨を舐められ、声が零れた。  濡れた声音が自分の口から出てしまったことに狼狽えている暇はなかった。  男の唇と舌が銀の裸の胸を責める。  小さく尖った赤い果実のような頂は男の口に飲まれ、指先がもう一つを弄りだした。  吸い上げられ、甘噛みされて引っ張られて……銀は切れ切れに悲鳴のような声を迸らせる。  駄目……!ああ……!  震える喉に、男が噛みついた……柔らかく歯型なんて残らない位の優しい力だった。  びくんと震える銀の身体を引き寄せ、肩に唇を落とした男がベルトに手を掛けた。 「あ…!ブランカ……」  駄目だと言う前に、ベルトが引き抜かれてズボンがずるりと脱がされた。  下着まで一緒に引き抜かれて、銀はぎゆうっと目を閉じた。 「…銀……こんなに…濡れている…」  男の声に、銀は恥ずかしくて居た堪れなくて震えた。  胸への愛撫だけで、銀の下半身は快楽に切なげに震えて、滴をたらたらと零しているのが自分でも分かっていたのだ。 「…や…い…や……みないで…」  泣きながら訴えれば、そっと唇が重ねられた。  泣いている銀を宥めるように。銀に許しを求めるように……  唇同志を挟んでこすり合わせて、舌を絡める濃厚な口づけにさらに快楽が高まる。  膝を擦りつけるように、少しでも隠したいと思う銀の動きは男の手で防がれた。 「…見せて欲しい…銀の全てを私に…」  囁きは熱を孕み、吐息は切なげに掠れている。  目を上げて、自分を見つめる男を見れば……熱に浮かされた顔。  男も、欲情し切っていた。    ああ……!  俺も……見たい。  あなたの全てが……欲しい。  胸を焦がす情欲の声が頭の中で響いた。  躊躇いは、脇に追いやられていた。  おずおずと、膝を開く銀に男は微笑んだ。 「…ありがとう…銀…とても…綺麗だ…!」  恥ずかしかった。  とってもとっても……恥ずかしいけれど、嬉しかった。  だから俺も、見たいと強請ると嬉し気に男は頷いた。  銀の身体からゆっくりと手を離すと、男は自分の服を脱ぎだした。  男の……ブランカの上半身は鍛え上げられた筋肉に覆われていた。  細身なのに、鋼のような身体だった。  まるで芸術家が彫り上げた、神の彫像のよう。  美しさに、目を奪われていると男はベルトを外して躊躇せずに一気にズボンを脱いだ。 「…っ……」  男の下半身のモノは……天を仰いで雄々しく反りかえっていた。  銀のものよりも大分大きい。それよりも形が少し……いや、大分変わっていたことに驚いた。 「…人とは違う…だろう?狼は人よりも、射精に至るまでに時間がかかる。その為に……体内に子種を全て注ぎ終わるまでこの瘤が中で膨らみ…結合部分から外れないようになっているのだ。私は人狼だから…そこまで時間は掛からない筈だが…それでも、人よりも長く番の体内にこれを収めている必要がある。大丈夫……優しくする。ちゃんと痛くないように……時間をかけて入れるから…だから怯えないでくれ…」  そっと銀の頬を撫でながら、男は囁いた。  銀の表情から、不安を感じ取ったのだろう。  少しだけ悲し気な声だった。 「…うん…ちょ…っとだけ吃驚…した。でも……嫌じゃないし……怖くもないよ?ブランカが…その…俺で……ちゃんとその…た…立ってたのが…嬉しい…」  少しは怖いというか……大丈夫なのかなと不安には思ったけどそれだけだ。  嫌じゃないし。ちゃんとしたいと思っている。  誤解されたくなかったから、恥ずかしかったが思った事を正直に口に乗せれば、男が目を見開き……銀の身体にガバッと覆いかぶさった。 「…く…っ…お前は……お前は、本当に……!困った…私の番は…私をこんなにも…狂わせる事を平気で口にする…!優しくする!それは約束するが……初めてだからといって…加減できるか…もう分からんぞ!」  男は言いながら、銀の唇を貪った。  溢れ出る熱情のまま……互いの吐息を奪い合った。  裸の胸が擦り合わされ、足を絡めた。  濡れた熱い肉の高まりを押し付け合い、互いの粘液でべっとりと濡れたそれは火傷しそうに熱い。  太腿に、腹に擦り付けられる男の肉棒はどんどん硬度を増していく。  銀は、息を切らして男の口づけと愛撫に応える。  気づけば全身から汗が吹き出していた。  流れる汗さえ、男は愛おし気に舐めとる。  全身を隈なく舐められ、銀の高ぶった肉棒を口に咥えられて悲鳴を上げた。 「だめ…!そんな…されたら…っ」  出ちゃうと泣けば、より強い刺激を与えられて腰が跳ねた。  ビクビクと震えながら、銀は男の口の中で果てた。  ぐったりと力を失い荒い息を吐いていると、後ろの窄まりに荒い息遣いが感じられた。 「…ちょ…!駄目…そこ…はっ…」  ぺちゃぺちゃという水音とともに、濡れた感触。  恥ずかしさに身悶える銀に、男が笑う。 「…ここも…とても可愛らしい…だが…本当に小さくて狭い……かなり時間を掛けないと…お前の中には入れそうにない。力を抜いて…私の為に…私を受け入れてくれ…早く…一刻も早く…お前の中に入りたい…」  男の熱望の声に、銀は息を飲んだ。  今すぐにでも欲しい。  そう叫ぶ自分の声が……した。  だが、男にそれを告げても拒まれるのも分かっていた。  だから頷いた。  震える声で、俺も早く……あなたが欲しいと告げた。  銀の声に男は唸り声のようなものを上げたが、少しも乱暴には扱わなかった。  丁寧に、舌と濡れた指先で銀の後ろの穴を柔らかくしていく。  指先が奥で回される度に、銀の腰の中心のモノも再び立ち上がり始めた。  つう……零れ落ちた涙のような愛液を男の熱い舌が舐めた。  愛しくて……食べてしまいたいと囁く声に、銀も囁き返す。  食べてもいい。  あなたになら……全部食べられてしまいたい。 「…一番最初の夜に……断られてしまった…けれど…ね…?」  微笑めば、男も微笑んだ。 「…もう…大丈夫だと思うが…ゆっくりとするが…辛かったら言ってくれ。お前が苦しいのは嫌だ…欲しいのは、身体ではないのだ。私は……お前の愛が欲しいのだから…」  愛。  男の言葉に銀は頷く。  俺も同じだと告げる。  あなたの愛が欲しい。  あなたの……全てを俺に頂戴と強請れば、後ろに熱い感触。  硬くて脈動を繰り返す、男の欲望が押し付けられた。  息を飲む銀に、ゆっくりと息を吐くように告げて男は腰を進めた。  ずぶずぶと……熱い塊が銀の中に這入り込んだ。  痛みは無い。  ただ身体の中を押し広げられる圧迫感が凄い。  それでも必死に息を吐き出し、男を……愛しい者を受け入れようと必死になった。  額に滲んだ汗に、男が大丈夫かと声を掛けた。  大丈夫。だから……お願いあなたが欲しいよと背中にまわした手に力を込めた。  中ほどまで押し込められた熱が一旦引かれて、更に奥まで進んだ。  何度かそれを繰り返す内に、声が溢れだした。  止まらない動きに、頭の中が白くなって何も考えられない。  気持ちがいいのか、嬉しいのか……  ブランカ……!ブランカ……  どうしよう。なんにも分からなくなるよと訴えればそれでいいと、答えが返って来た。  縋り付く腕は震えているけれど、決して離れないように一生懸命力を込めた。  銀の細い腰を掴む男の手は一瞬だって緩まない。  内部を擦り上げる熱い肉の感触に、立ち上がった銀のモノも震えて大量の涙を流し続けた。  もう、気持ちがいい事だけしか分からない。  銀の中で、男の欲望は張りつめて動きを速めていく事しか考えられないみたいだ。  荒い息で、何度も銀の名を呼ぶその声は掠れ切って……苦し気だ。  銀も同じだった。  どうしようもないくらいに欲しい。  もっともっと欲しいと、泣きながら願えばぐっと男の手に力が籠った。 「あ…!あ……ああ…っつ…!」  グボッと音がした。  一番太い場所よりも更に奥。  肉棒の根元にある膨らみ始めた瘤が銀の体内に押し入ったのだ。 「…銀…!銀……!ああ…!なんて幸福なんだ…私はお前に…こんなにも求められている…どうか…このまま私の全てを受け止めてくれ…!」  男の感極まった声とともに、銀の最奥に辿り着いた肉棒の先端から勢いよく熱いモノが吹き出した。  ドプドプと音が聞こえそうな、激しい絶頂に男の身体が痙攣したようにぶるぶると震えた。  抱えられた銀の両足も……震えていた。  銀も再び絶頂を迎えたのだ。ドロリと銀の腹に白濁が吐き出された。  全て出し切り快楽の余韻に浸っている間も、体内に収まった愛する者の楔はゆっくりと熱いモノを注ぎ続けた。  抱えていた銀の両足をそっと下ろして、男の身体が覆いかぶさった。   「……済まない…もう暫く…このままで…私も初めてだから…どれくらいの間このままか分からないが…大丈夫か?身体は……辛くないか?」  両腕を背中に回して抱き寄せられながら……銀は微笑んだ。  ちっとも辛くなんてない。  幸福な気持ちだけが胸に溢れていた。 「…平気……嬉しい…ブランカも…気持ちいい…それが一番嬉しいんだ…凄いね……まだ、出てるの…?お腹…すぐに一杯になっちゃうね…?」  くすりと笑えば、男は困った顔をした。  自分の意思で止められないんだと言う男に冗談だよと笑うと、男も微笑んだ。 「……こんなに…気持ちが良いとは…知らなかった…愛する者に受け入れられる喜びが…これほどのものだとは…知らなかった。生涯お前を私は手放さないだろう…銀…ありがとう…愛しているよ……私の番…私の命……私の永遠の半身…どうか……お前が死ぬまでずっと愛することを許してくれ…愛しいお前と一緒にいる幸せをこれからもずっと私に与え続けて欲しい」  微笑む銀の唇に口づけ男は愛を囁いた。  銀もその唇に愛を返した。  永遠に……あなたのもの。  俺は……あなただけのもの。  繋がる身体は熱い。  初めての愛の交歓は、素晴らしいものだった。  互いを求め合い、互いを与えあうその行為が激しくて愛しいものだと知った今……何一つ怖いモノは無かった。   「…ブランカ…愛しい俺の番……狼の王。でも……あなたは俺のもの。誰にも…渡さない。だからあなたも……俺を離さないで。ずっと……こうしていたい…あなたが俺の命。あなたが…俺の永遠……」  掻き抱く腕の強さに、瞳を閉じて銀は幸せだ。  誰にも愛されないと思っていた、自分に起きた奇蹟。  涙に濡れた夜を越え……辿り着いたのは光の中だった。  狼は夜の生き物。  だからまだ時間がある。  もっと欲しいといったら怒る?囁けば、身体の中の雄がビクンと大きく蠢いた。  答えは……聞く必要も無かった……らしい。  くすりと笑えば、唇に噛みつくような勢いで口づけられた。  貪られる……食べられてしまいそうな口づけも酷く甘い。 「…本当に困った番だ……!」  ちっとも困っていない顔の男に銀は口づけた。  優しい王様は、優しい銀の番。  たった一人の、自分の半身はゆっくりと身体を起こして銀をその黄金色の瞳で見つめた。  そこに灯った情熱に、銀は震える。  ああ……!俺はこの人が心の底から欲しい!  この人しか要らない。  銀は微笑んで、愛しい者へと手を差し伸べた。

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