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5日目・2
変化が現れたのは、男が出掛けてすぐのことだった。
『仕事に行ってくる』と言い残し、男が去った部屋の中で、おそ松はひとり、体の奥から沸き上がる熱に苦しんでいた。
「っあ、ンン…はぁ、ん」
熱い。
体中が熱い。
下半身から発せられていると思われる熱は、体中の神経を犯し、服が擦れる度、冷たい空気が直接肌に触れる度、ゾクゾクと背筋を震わせた。まるで、全身が性感体になったようだった。
「はぅ、んっ…クソ…っクソ…、んんぅっ」
体を少しでも動かすと、おそ松の意思は関係なく、快感が駆け巡る。いつの間にかぺニスは硬くなって先走りを垂らし、乳首も痛いほど張り詰めてパーカーを押し上げていた。
(イきたい…っっ)
しかし、刺激が足らなくて達せられない。ぺニスを扱きたくても、ガムテープで両手を拘束されているため、それも叶わない。
もどかしい刺激に勝手に腰は揺れ、快楽を感じるものの物足りず、さらに体を捩らせる悪循環に嵌まっていた。
しばらくそのループに苦しんでいると、不意にぺニスの先が畳で擦れて、強い刺激にビクンッと体が跳ねた。
「くぅ、ンっ…ひあっ!?」
トプッと粘ついた先走りが畳を濡らす。
(…このまま擦れば…っ)
小さな光が見えて、意思を持って腰を大きく畳に向けて揺らした。
ざらざらとした感触が、薬で敏感になったぺニスの先から裏筋を刺激する。固い畳に擦られて痛いようななんとも言えない快感に、ビクビクビクッと下半身が震える。
「ンアァッあっあんッあぁあっ」
もう止まらなかった。
誰もいない部屋で、一人でヘコヘコと腰を揺らして甘い声をあげる。
端から見たらとても滑稽な姿だが、それすらも考えられずに、ただただ射精を求めておそ松は犬のように腰を振り続けた。
そして、体中の熱が中心に全て集まったような感覚に恍惚とした表情をした瞬間、ズキンとぺニスの根本が痛くなった。
「あんっア、ぁあっーーっ!?」
体の動きが止まる。涎を垂らした口はぱっかり空いて、ハァハァと荒い呼吸を繰り返した。
そういえば、男は出掛ける前におそ松に薬ーー恐らくは媚薬だーーを盛り、その後、ぺニスに何か付けていたような気がする。
痛みも何もなかったため、忘れていた。
それが今、おそ松の射精を塞き止めている。目隠しをされたおそ松には見えないが、ビンビンに勃起したぺニスの根本にリングが嵌められていた。
しかし、快楽は治まらない。
もう一度、おそ松はぺニスを畳に擦り付けると射精直前の強い快感と共に、鈍い痛みが下半身に走る。
「っ、なんで…、っ」
こんなに気持ちがいいのに、最後の快楽が得られない。頭の中が色々な感情でない交ぜになり、おそ松は目隠しの下で泣き出した。
「うぅっ」
泣いているのに体の火照りは治まらず、心と体が離れていく感覚におそ松が襲われた時ーー。
「なに泣いてんだ?」
男の声が、――楽しそうな声音が聞こえた。
いつの間にか、男は帰ってきていた。
煙草の匂いと、少しだけ鉄の匂いがした。
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