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6日目・1

見知らぬ部屋に居た。 いつもの6畳間のアパートだ。 おそ松は体育座りで、そこに居た。 目隠しはなかった。 足も手も拘束されていなかった。 赤いパーカーに、ジーンズを履いていた。 男は居ない。 心臓が高鳴る。 (今なら、逃げられる―――) おそ松は思った。 拘束もされず、服も剥ぎ取られず、男もいない今なら、ここから逃げ出せると。 緊張して、両手がじっとりと汗ばんだ。 体を起こそうとした瞬間、ハタとおそ松は気づいた。 (逃げられるって―――、『どこ』に逃げればいいんだ?) この部屋から出たら、自分はどこに行けば良いのか。 おそ松は分からなかった。 そして、躊躇していると玄関のドアが開く音が聞こえた。 ホッとおそ松は安心をした。 (…安心?) なぜ、自分が安心をしたのか分からず、自分で自分に首を傾げた。 そして、男の姿が見えた。 相変わらず、目元は黒く塗り潰されている。 けれど、もう、怖いとは思わなくなっていた。

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