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6日目・2

「なんだ、起きてたのか。お前、どっち食いたい?チャーハンと焼きそば」 ガサッとスーパーの袋から食べ物と缶ジュース、缶ビールが出てくる。 「……、どっちも好き」 「あ?贅沢言いやがって。じゃあ、分けるか」 ちゃぶ台の近くに無造作に置かれていた袋の中から、紙皿を一枚出して、男はおそ松に差し出してきた。キョトンとしていると「おい、ほら、持てよ」と言われ、おそ松はそれを手に取った。 ブラウン管の古いテレビ、男はつける 下らないバラエティ番組を見ながら、黙々と男は食べ出した。 おそ松はどうしていいのか分からず、男の隣で呆けていると、チッと舌打ちをされた。ビクッと肩を震わす。紙皿を乱暴に取られ、このまま叩かれるのではないかと思い、おそ松が目をつぶって体を硬くしたものの思っていた衝撃はいつまで経っても来なかった。恐る恐る目を開けると、紙皿の上にチャーハンと焼きそばが乗っていた。 「……え?」 「さっさと食え」 ぶっきらぼうに男は言うと、既に食べ終えたのか煙草を一本出して、火をつけていた。 「…いただきます」 おそ松は、目の前に出された食べ物に口をつけた。 いつの間にか自分の前に、缶ジュースも置かれており、それを手にしても何も言われなかった。当然のようにおそ松に与えられていた。 穏やかだった。 かつてなく、静かで、何の恐怖もない穏やかな時間だった。 (なんでだ?) おそ松は分からなかった。 どうして男が自分へ理不尽に怒らないのか。 暴力や陵辱を与えないのか。 むしろ、食べ物を与え、穏やかな時間を過ごしている。 (―――そうか、俺が『良い子』になったからなんだ) 最後の一口を口に入れた時、おそ松は気づいた。 ここ最近、男にずっと言われていた言葉を思い出した。

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