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第158話

仕事が全部終わってそろそろ帰る時間。ぐぐっと伸びをして席を立つと部屋にいた赤石と中尾と八田に手を振られ、手を振り返してから部屋を出た。 「ただいまー」 「───命っ!」 「あぶねっ!!」 急いで走ってきたユキは俺の一歩手前で転けそうになる。それを支えて抱きしめると驚いた顔をして固まってたユキがモゾモゾと腕の中で動き出した。 「ユキ、家の中ではあんまり走るな」 「…わかった。あ、あの…僕、苦しい…」 「ああ…悪い」 腕から解放してやるとふぅと息をついてからおかえりと満面の笑みで言われてただいま、ともう一度伝えた。 「……僕…僕、お腹空いた」 「すぐに飯作るよ。シロと遊んでてくれるか?」 「…うん…」 俺にくっついていたユキがシロのところにゆっくり歩いていく。そんなユキを見て暖かい気持ちになったけどどうしても早河のことが気になって仕方がなかった。 *** 早めの晩御飯を済ませて風呂に入って酒を飲みながらボーッとする。目の前ではユキがオレンジジュースを飲んで満足そうにしていた。 早河は大丈夫なのだろうか。明日も休ませてやりたいなんて思うけど、きっとあいつにとってそれは大きなお世話だろうし。何より自分に取り柄がないなんて思っているだろうから仕事を休ませることが逆にストレスになったりするのかもしれない。 「うー…ん…」 「命、大丈夫…?」 「あ、おう。大丈夫、ありがとな」 「うん」 大丈夫とは言ったもののどうしたらいいのかわからなかった。

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