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第157話
若の課題を終わらせ説明をしてなんとか理解をしてもらったあと幹部室のソファーに寝転びぐぐっと伸びをした。
そんな時携帯が震える、確認すると早河からの電話だった。
「はい」
「命、聞きたいことがある」
「何だよ、何でそんな焦ってんの?」
どんな危険な仕事を受けたときだって冷静な早河が珍しく焦っているようで俺にも緊張が走る。
「──さっきの好きはどういう意味なんだ」
なのに、そんな意味のわからないことを言われて拍子が抜けた。
「どういう意味かわからないと」言うと簡単に説明してくれる。何やらその高校生が早河に好きだと言ったらしい。だが、そんなことを言われ馴れてない早河からすれば、それがどういう意味かわからないんだとか。
いやいや、それは俺に全く関係ない。
「そんなこと俺が知るか」
そう言うと電話の向こうで深い溜息が吐かれた。
「そいつのせいで悩んだり疲れたりするなら追い出せっていっただろ。」
「それは無理だって…」
おう、それはさっきも聞いたし。だけど、こんなこと本人に言うべきじゃないと思うけど……
「俺は、その高校生より、お前の方が大切だと思ってる。」
「…………」
「…追い出すのが無理ならお前がそいつから少し離れれば良い。それかその高校生、少しの間だけだが俺のところで面倒を見てやるよ」
早河は家族だから…あいつがしんどいのなら、ユキには何にも話してないけど俺の家で少し暗い面倒を見てやれる。
そう思ったのに早河はブチっと何にも言わずに通話を切りやがった。
「……はぁ!??」
苛ついたのは仕方がない。
イライラしながら仕事をしてると部屋に八田が戻ってきた。眉間にシワを寄せて自分の席にどかっと座る。お疲れの意味をこめて珈琲を入れてやると力なさげに「ありがとう」と言いながら小さく笑った。
「……何かあったのか?」
「あ?…あー。前にお前と取り立てに行った女、覚えてるか?」
「ああ」
体調がものすごい悪かったあの女だよな、そういえば約束の期間は過ぎた。
「今日行ってきたんだ。金はちゃんと集まってて渡してきたんだが……安心したのか何なのか…もとから体調が悪かったってのもあると思うけど、倒れたんだよ」
「へぇ…」
「何か、罪悪感がさ…」
俯いた八田。簡単に大丈夫だなんて言えなくて言葉を見つけようとするけどでてこない。
「…別に、それが仕事だし気にしなくていいだろ。俺はその事で悩み続けてる八田なんて見たくねえよ」
「はぁ…?何だそれ」
「兎に角、嫌なものは嫌なんだよ」
すごい優しいやつだから仕方がない。けれどそれは仕事に支障を来すかもしれない。それなら仕事に優しさは要らないと思って。
「…そう、だな。」
そういう気持ちが伝わったのだろうか、八田は自虐気味に笑った。
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